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至誠一貫・閑話&番外編&キャラ紹介
◇閑話・壱◇ 〜晋陽での一日〜
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暮らせる場を作るとしよう」
「……ん。兄ぃが頑張るなら、恋も頑張る」
 ふふ、相も変わらず純な女子だ。
 さて、この雰囲気では、ここは不味かろう。
「ではな、恋」
「……(コクッ)」
 とりあえず、場所を変えるとしよう。


 糧秣庫の、裏手。
 ここならば、誰もいない筈だが。
「おおー、お兄さんではないですか」
 ……何故か、風がいた。
「何をしておるのだ?」
「はいー。猫と語り合おうかと」
 確かに、風の目の前には、大きなぶち猫が一匹、大きな欠伸をしている。
「それで、何を語っていたのだ?」
「いろいろですよー。お兄さんが、昨夜星ちゃんとお楽しみだったとか」
「ほう。何故、そう思う?」
「風に隠し事は無駄なのです。お兄さんの事ならば、いろいろとお見通しですからね」
「……風。もしや、拗ねているな?」
「いえいえー。どうせ風は、愛紗ちゃんや星ちゃんのように、女らしい身体つきではありませんからねー」
 どうやら、完全に機嫌を損ねたらしいな。
「……済まん」
「どうして、謝るのでしょうか。お兄さんは、何か疚しい事がおありですか?」
「ある。風がこうして、眼を見て話してくれない事。存外、堪えるものでな」
「…………」
「今の私は、猫にも劣るようだ。ならば、暫し頭を冷やして参ろう。邪魔したな」
 踵を返すと、
「……待って欲しいのですよ」
 風が、腰にしがみついてきた。
「風が言い過ぎました。……風は、寂しかったのですよ。お兄さんが、いろんな人に囲まれて、皆に好かれているのが」
「だが、私は風を無視していたつもりはない。それは、嘘ではないぞ」
「わかってます。お兄さんは、優しい御方ですからねー」
「だが、風を哀しませたぞ?」
「風だけじゃありませんよ? 稟ちゃんだって、口には出しませんけど」
「……そうだな。では風、詫びと言う訳ではないが、昼を馳走致そう。私の国の料理だが」
「むー。食べ物で釣る気ですか? 風は、鈴々ちゃんや恋ちゃんとは違うのですよ?」
「そう申すな。私手ずから、手間をかけたいのだ。稟と二人、昼になったら厨房まで参れ」
「そこまで言われて拒めば、今度は風がお兄さんに嫌われてしまいますね。お兄さんは、狡いのですよ」
「狡くて結構だ。それで、二人に幾ばくかの詫びになるのであれば、な」
「……本当に、お兄さんには勝てませんね。わかりました、なら稟ちゃんにも伝えておきますねー」
「うむ。……ところで、いつになれば離して貰えるのだ?」
 風は、抱き付いたままなのだ。
 これでは、私は動けぬのだが。
「……ぐう」
「……狸寝入りしても無駄だ。私も、予定というものがあるからな」
 そう言うと、風は名残惜し気に、私から離れた。
「ではではお兄さん。約束を忘れたら、お仕置
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