◇閑話・壱◇ 〜晋陽での一日〜
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水浴びだど」
顔を赤くして、私を眼を合わせようともせぬ。
……ふむ、男の裸体を見るのは恥ずかしい、か。
「暫し、あちらを向いているがよい。すぐに服を着る」
「あ、ああ」
素直に背を向ける閃嘩。
手早く身体を拭き、着物を手にする。
「閃嘩こそ、このような時分に如何した?」
「う、うむ。歳三を、探していた」
「私を?」
「ああ。私と、仕合をして欲しいのだ」
「仕合? 武ならば、私などより、恋や愛紗の方がよいのではないか?」
「日々の鍛錬ではない。私の、覚悟の程を見て欲しいのだ」
「覚悟か」
「そうだ。私のこの名、月だけでなく、歳三も考えてくれたそうだな」
「……気に入らぬか?」
「違う! このような私を、そこまで気にかけてくれた事に、心から感謝している。だが、同時に重みも感じているのだ。貰った名に相応しい私に、なれるかどうか」
「なるほど。だが、私との仕合、それとどう関わりがある?」
「……愛紗が、手合わせの度に言っていた。本当に強いのは、歳三だとな」
「それで?」
「ならば、暫しの別れとなる前に、見て欲しいのだ。……私の覚悟を」
さて、着替え終わったな。
「もう、こちらを向いてもいいぞ?」
「あ、ああ」
振り向いた、閃嘩の眼。
うむ、いい眼をするようになったな。
以前は、ギラギラとした猛獣の眼そのものだったが。
今は、己を見据え、相手を見定める事の出来る、そんな眼をしている。
「いいだろう。本当に、良いのだな?」
「頼む。歳三に教わった、将の心得たるもの、無にはしたくない」
「ならば、二刻後。中庭に参れ」
「承知した」
……さて。
少しばかり、型でも使っておくとするか。
如何に仕合とは申せ、閃嘩程の者を相手にするのだ。
生半可に立ち合えば、私自身も只では済むまい。
軽く朝餉を済ませ、裏庭に向かう。
「……兄ぃ」
恋が、犬と戯れていた。
……セキトだけではなく、猫や鳥、様々な動物に囲まれている。
「皆、恋が飼っているのか?」
「……(フルフル)」
流石に違うか。
「……みんな、恋の家族」
「そうか。恋は優しいのだな」
「……優しい?」
「いや、私はそう思うぞ。家族を大事に出来る者は、優しい。間違ってはおるまい?」
「……ん。だったら、兄ぃも、優しい」
「私が?」
「……恋にも、セキト達にも。愛紗や星、月、霞……みんなに、優しい。だからみんな、兄ぃの事が、好き」
「……そうか。そう思ってくれるか」
「ワン!」
セキトが、足元にじゃれつく。
「だが、私は時として、鬼になる。優しさのみで、生き延びていける筈もないからな」
「……でも、兄ぃは兄ぃ。だから、兄ぃも、月も、恋が守る」
「ならば、私は恋や、セキト達が安心して
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