暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン34 退路なきエンターテイメント
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カナディアの使い方とは言い難い。糸巻としても本当は、ビッグ・スターの効果を使われる前に裏守備にして効果の発動そのものを止めておきたかった。それを許さなかったのが、ビッグ・スターのもう一つの効果である。自身の召喚、特殊召喚成功時に相手の魔法、罠の発動を封じるこの効果によって、この花形はより確実に魔界台本をフィールドに呼び込む。

「『ああ、なんというハプニングでしょう。我らが座長は急遽体調不良のため出演辞退、これではせっかくの魔王の降臨も画竜点睛を欠くというものです。はてはて、一体どうしましょう?』」

 攻撃表示の魔界劇団の種類に応じて発動時の破壊枚数を増やし、さらにレベル7以上が存在すると相手のチェーンすら許さない魔王の降臨。やらないよりは遥かにマシではあるが、あまり有効的とは言い難い一手。しかもそんな糸巻の神経をさらに逆撫でするのが、まるで堪えた様子のない余裕綽々な……本心を巧みに隠しているだけかもしれないが、少なくともその様子を外には出さずいささかも崩れない鳥居のエンタメスタイルである。
 そしてもっと言えばその怒りには、つい「台本の封切り前」などと、彼のエンタメに乗っかるような形になってしまった自分への苛立ちも多少なりとも含まれる。
 そんな糸巻の感情を知ってか知らずか、鳥居は壇上で快活に笑う。いや、気づいていないということはないだろう。彼は紛れもなく、よく鍛え上げられたエンターテイナーなのだから。

「『ならば答えは単純明快。ここは降板した座長に代わる、更なる特別ゲストをお呼びしましょう!私は闇属性のレベル4ペンデュラムモンスター、サッシー・ルーキーとワイルド・ホープでオーバーレイ!』」

 伏せられたままの魔王の降臨はあえて沈黙を保ったままに、壇上に遺された2体の団員が紫の光となって飛び上がる。螺旋を描き、床にぽっかりと空いた宇宙空間へ通じる穴へと吸い込まれ……無音の爆発とともに壇上に着地したのは、雷鳴の逆鱗を煌めかせる漆黒の龍。

「『2体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚、ランク4!覇者の裁きをもたらす龍、覇王眷竜ダーク・リベリオン!』」

 ☆4+☆4=★4
 覇王眷竜ダーク・リベリオン 攻2500

「ダーク・リベリオン、殺意の塊……ちっ、そっちが本命か……!」

 その漆黒の龍を前に、苦々しげに舌打ちする糸巻。おそらく鳥居は、彼女が最初のターンに2枚の伏せを残した時点でビッグ・スターらによる一斉攻撃だけで勝負が終わるなどとは最初から思っていなかったのだろう、と今更ながらに彼の狙いが読めてきた。
 つまり、こうである。今回の鳥居にとって、はじめからビッグ・スターは囮にすぎなかった。魔王の降臨による一掃からの一斉攻撃という決して無視できない、途中で妨害せねばどのみち糸巻の
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