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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン34 退路なきエンターテイメント
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れぐらいやらないと、巴さんの目は誤魔化せませんでしたからね。あの人の誘いに乗ってこの計画に参加した時点で、俺が動きやすくするためにほんの少しでも疑念の芽を摘んでおく必要があったんすよ」
「動きやすく、ねえ。正直アンタの女々しい正当化なんざ聞きたくもないが、まあ一応聞いてやるよ。鳥居よ、一体何企んでんだ?」
「言えるわけないでしょう、もう。あえて何か言うとしたら、世界を変えること、っすかね」
「すかしてんじゃねえ、タコ!もういい、もう聞きたくない。お前が何考えてようが、どうせくだらねえ話なのはよーく分かった。交渉決裂だ、1発といわず5、6発ぶん殴って本土に連れ戻してやるよ」

 呆れ顔で肩をすくめる元部下に、ついにただでさえ小さな糸巻の堪忍袋が爆発した。実は彼女、本人が酸いも甘いも知り尽くしてきたタイプゆえかこの手の世の中舐めた言動は割と嫌いである。暗闇にもお構いなしに怒りのオーラを立ち昇らせながらデュエルディスクを構えると、スポットライトの中で気取った動作で鳥居もまた構える。

「ま、こうなりますよね。すんませんが糸巻さん、俺も今更後には引けないんですよ」

「「デュエル!」」

 流れるように始まったデュエル。初手を取ったのは、糸巻だった。

「不知火の武部(もののべ)を召喚し、効果発動。デッキから妖刀−不知火モンスター1体をリクルートする代わりに、このターンアンデット族しか場に出すことができない。来い、妖刀!」

 不知火の武部 攻1500
 妖刀−不知火 守0

 オレンジの和服に身を包む短髪の少女が漆黒の暗闇の中で手にした薙刀を振るうと、その剣さばきに誘われたかのようにどこからともなく灯った炎に包まれ、一振りの刀が宙に浮く。
 まずはこの効果が通ったことで、糸巻の場にはモンスターが2体。2体のレベル合計は6であり、アンデットしか特殊召喚できない縛りの中であってもヴァンパイア・サッカーをはじめとするリンクモンスター、あるいは刀神−不知火を筆頭とするシンクロモンスターに繋げることも可能ではある。しかし怒りの真っただ中にあっても冷静に戦況を見つめる糸巻のデュエリストとしての理性が、それを思いとどまらせた。鳥居浄瑠の操る【魔界劇団】は、あらゆる状況に対して粒ぞろいのモンスター効果と多様な魔界台本を使い分けてあの手この手で相手を翻弄する。制圧用のカードが出せるわけでもないのに頭数を減らすことこそ、愚の骨頂に他ならないか。

「……カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 結局エクストラデッキには触れずターンを終えた糸巻に代わり、鳥居が俊敏な動作でずっと座っていた机の上に土足で立ち上がったかと思うやいなや、すうと息を整える。外口を開くと、暗闇にはそぐわないよく通る明るい声が飛び出した。

「『ようこそおいで下
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