ターン34 退路なきエンターテイメント
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体が軌道を変えて鳥居のセットカードへと突撃する。しかし、糸巻はといえば落ち着き払ったものだった。
「効果を書き換える、ねえ。大した効果だとは思うが、それだけだ。1ターンに1度だけ、プレイヤーの意思にかかわらず強制的に適用される効果。つまり、雪女の効果のトリガーとしちゃ十分ってことだ」
「『!』」
声にならない声。それとも、悲鳴を急速に膨れ上がった吹雪がかき消したのかもしれない。足元から急速に成長した氷柱に呑み込まれ、コミック・リリーフもまた氷漬けとなる。そこにゆっくりと近づいた雪女が氷の薙刀を掲げ、無造作にも思える動作で突きを放つ。自慢の戦闘ダメージを0とする効果も、無効となっては何の意味もなく。モンスター効果ではないゆえに影響を受けない付与されたバウンス能力も、その前にプレイヤーのライフが尽きていては適用のタイミングが訪れることはない。
魔界劇団−コミック・リリーフ 攻1000→0(破壊)→零氷の魔妖−雪女 攻2900
鳥居 LP1500→0
「大人しくしときな、鳥居。アンタはアタシと違ってまだ若いし、いくらでもやりようはあるさ」
「……結局、俺じゃ駄目だったんすかね。裏取引だらけの世の中を続けていくしか、デュエルモンスターズが生き残る方法はないんですか?」
消えていくファンタスティックシアターの中で大の字に倒れた鳥居が、よろめきながらも2本の足で立つ糸巻に問いかける。いつになく素直に彼女なりの答えを答える気になったのは疲労がたまっていたせいか、それとも鳥居の声色から伝わってくる、10年以上経った今でも裏稼業的な立ち位置に甘んじているデュエルモンスターズ界への悲哀に対して何か思うところがあったからか。本人にも、よく分からなかった。
「さあ、な。少なくとも、それを考えるのはアタシじゃない。アンタみたいな若いのや、八卦ちゃん達次の世代のデュエリストたちさ。アタシみたいな時代錯誤の老兵に、今残された役目はただひとつ。いまだにこの稼業に居座って過去の栄光を追い求める老害どもに、引導を叩きこむことだけさ。アタシらの世代がまいた種は、アタシらが刈り取ってやんなきゃな。ゴミはゴミ箱に、だろ?」
もっとも、自分の出した結論が詭弁に過ぎないことは糸巻自身が誰よりもよくわかっていた。もっともらしい理屈をつけて偉そうに語ってはいるが、やっていることは結局ただの責任逃れ、考えることの放棄でしかない。
しかしそんなどうしようもない、戦うことしか能のない自分であっても。鳥居のようなちゃんと自力で考える頭を持ったデュエリストのために、まだやってやれることはある。
だがその前に、彼女にはひとつ確認したいことがあった。
「ちなみに鳥居よ、お前ここで一体、何やらかすつもりだったんだ?」
「……あのデュエ
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