暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン34 退路なきエンターテイメント
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に1つだけ見えるドアへと視線を向ける。勢いよく外側から蹴り飛ばされて派手に開いたそこに見えたものは、糸巻のいる塔と同じく設置された階段を駆け上がってきた黒目黒髪の少年が蹴り足を下ろす姿だった。

「へいへーい。お前さんに恨みはないけど、せっかくだからデュエルと洒落込もうじゃないの」
「私も貴方への恨みは特にないですが、ここまで来ていただいた以上は歓迎しないというのも礼節に欠くというもの。肩慣らし程度には付き合っていただきましょう」

 プラントの実験を奪う際にしばらく電源を落としていたデュエルディスクを再起動させて巴が椅子から立ち上がると、清明もゆっくりと距離を詰めつつ、その腕輪に触れて水のデュエルディスクを展開する。
 2匹の獣が互いに飛び掛かる隙を窺っているかのようにじりじりと、一定の距離を保ちつつ円を描いて半周ほど。両者のはち切れそうなほどに張り詰めた空気が限界に達した瞬間、2人はともにカードを引いていた。

「「デュエル!」」





 一方その頃、隣の塔では。清明にやや遅れ、糸巻も上階に辿り着いていた。次の区画に繋がる扉を勢いよく押し開けると、そこには1メートル先すらも見えないほどの暗闇が広がっていた。

「うおっと」

 小さく声が漏れ、そんな自分に心の中で舌打ちする。下の下位が過剰に眩しい照明で照らされていた白い空間だったせいで、こちらも似たような風景が広がっているだろうと思い込んでいたのだ。光源のひとつもない闇の中はまるで見通せないが、息詰まるような気配はない。なるほど、この闇の中の広さは下と同じくらいありそうだ。つまり、全力でデュエルを行ってもめったなことで壊れはしない。

「……」

 彼女が今昇ってきた階段には、ごく普通の電灯がともっている。ドアを開けた瞬間差し込んだその光は、嫌でもよく目立つだろう。この部屋に誰かいるとしたら、とっくに糸巻の存在には気づいているはずだ。何らかのアクションを起こしてくるかと慎重に10秒、20秒……飽きた。元より糸巻は、何かを待つという行為が好きではない。

「おうコラ、どうせ誰かいるんだろ?アタシを無視たぁいい度胸だ、邪魔するぜ!」

 威勢のいい叫びを闇に放り投げ、わざとどかどかと靴音を立てて闇の中に踏み込む。距離が縮まったせいか、見えないなりになんとなく人の気配は漂ってきたものの、それがどこにいるのか、そしてどんな存在かまでは掴めない。ますます苛立ちを募らせる糸巻の足の下で、何か小さく固いものを踏みつけた感触とともにかちり、とごくわずかな音がした。

「ちっ!」

 何を踏んだのかを考えるより先に、大きく後ろに飛びのいて警戒態勢に入る。もっとも今度は、何か起きるのを待つことにはならなかった。飛びのいた彼女の目に、天井から暗闇を裂くように突然
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