ターン34 退路なきエンターテイメント
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明るい電灯が煌々と照らす、広い空間。そのうちの壁一面に分割された、無数のモニターの光。光量こそふんだんであるもののどこか寒々しいその光景の中で、それを見つめる男がひとり。彼が見つめるモニターでは、ちょうど糸巻が麗神−不知火のカードをリンク召喚しているところだった。
「あの局面でイピリア、そして追加のドローカードはサイバース・ホワイトハット……どちらも、あの状況から1ターンでの逆転を可能とする数少ない組み合わせ」
忌々しげに、しかしどこか楽しげにそう吐き捨てる彼の名は、巴光太郎。
「明らかに、状況を打破するためのカードを引きよせている。どうやら彼女、全盛期の腕を取り戻しつつあるみたいですね」
くるり振り返り、今まさにとどめの一撃を放とうとしていた監視カメラの映像に背を向ける。その視線の先には気絶したうえで両手両足を縛り付けられ、さらにさるぐつわまで噛まされた男が倒れていた。人間である以上はこの男にもなにかしらの名があるだろうし、事実巴自身も先ほどデュエルで勝利して気絶させる前に名乗られたような気もするのだが、巴にとってはもはや過ぎたこと、大事の前の小事であるがゆえにすでにその名は脳裏から忘れ去られていた。
本来、この倒れた男も警察関係者が見たら目を丸くするような人材ではある。長年裏社会で暗躍し、その息のかかった者が警察やマスコミなどあちこちに潜り込んでいるほどの大物組織の幹部。巴たちが健在身を寄せる組織にとっては、長年目の上のたんこぶであった男である。
そんな彼が、なぜこのプラントに転がされているのか。理由は単純、彼がここの本来の持ち主、プラント建設の出資者だからである。新時代を司る新たな兵器となりうる新型「BV」奪取のためデュエルフェスティバルに送りつけた七曜と蛇ノ目が返り討ちにあったばかりか、そのまとめ役でありデュエルモンスターズ担当の責任者でもあった本源氏とも連絡がつかなくなったことに業を煮やし、正確な座標が秘匿されていたはずのこのプラントを拠点とすべく訪れた。そこを兜建設の襲撃、機密書類の強奪を経てこの場所を割り出し先回りしていた巴一行に急襲され、こうして無様な姿をさらしているのだ。
「それと、こちらの彼は、と」
しかし巴は倒れた男に一瞥すらも与えることなく、別のモニターへと視線を移す。ちょうどそこでは彼のいる階下の部屋で、待機させていた彼の部下が最後の一撃を受けてライフを0にされる光景が映っていた。
「遊野清明。一切の情報なく、数カ月前突然に何もない空中から湧いて出たとしか思えない人間……興味はありますが、今来られても困りますね。それにしても、彼がこちらで彼女があちらを選ぶとは。あちらの盤面も大変面白そうではありますが、まずは私の番ですかね」
そう言いざまにモニターと反対の壁、この部屋
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