今日、一つ進む時間(セレナ・カデンツァヴナ・イヴ誕生祭2020)
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「違うよ切ちゃん。職業病っていうのはね、特定の職業に着いてる人だけの癖の事なんだよ」
「って事は、アドルフ先生は患者さんの好きなものをすぐに思い出せるのが癖、ってことデスか?」
「そうなるね」
「それって、そんなに悪い事デスか?」
調からの解説を受けた切歌は、とても純粋な疑問を口にする。
それはアドルフの言葉──俗に言うツンデレ──を完全粉砕する程のものだった。
「……確かに、悪いものというわけでもないな……」
「じゃあ、何で病気だなんて言うんデスか?アタシは素敵だと思うデス!」
「それは……」
予想外の切り返しに、思わずたじろぐアドルフ。
それを見た調は、切歌に続いてアドルフを褒める。
「厄介がる事じゃないと思います。患者さんの事をちゃんと見てくれている、いいお医者さんの証拠ですよ」
「う、うーむ……」
そこへ更に、マリアが追い打ちをかけた。
「それとも、貴方が厄介がってるのは患者……私の妹の方なのかしら?」
「い、いや、そんな事は……」
腕組みして迫るマリアに、焦るアドルフ。
そして、セレナはアドルフを真っ直ぐに見つめてこう言った。
「アドルフ先生……わたしの事、嫌いですか?」
「別にそういう訳では……」
ツェルトに助けを求める視線を送るアドルフ。
しかし、ツェルトから返って来たのは、アドルフの期待とは真逆の言葉だった。
「ドクター・アドルフ、女の子を泣かせちゃダメですよ?」
「〜〜〜ッ!!分かった、分かった、認めればいいんだろう!?」
潤んだ瞳で見つめられ、こんな事を言われてしまっては、流石のアドルフ博士と言えどもツンデレに逃れる事は出来ない。
ツンデレドクターことアドルフ博士も、子供の純真さの前では型なしなのであった。
「セレナ、お前の誕生日を祝うために、わざわざ並んで買ってきたんだ……」
「本当ですか?」
「嘘を言う理由はない。私はお前の主治医だからな」
サングラスを外し、アドルフ博士はセレナに目線を合わせる。
「ハッピーバースデー、セレナ。ようやく1つ、歳を重ねたな」
「はい……ッ!アドルフ先生のおかげです。ありがとうございますッ!」
「私は何も、大した事はしていないさ」
アドルフの自嘲じみた言葉に、セレナは首を横に振る。
「いいえ。アドルフ先生がわたしを守ってくれていた事、マリア姉さんとツェルト義兄さんから聞いています。わたしがここで生きていられるのは、間違いなくあなたのおかげなんです」
「……そうか」
「はいッ!なので、先生には感謝してもしきれません。本当に、ありがとうございますッ!」
アドルフは立ち上がると、指で頬を掻きながら席へと戻って行く。
その表情が晴れ
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