第百七十五話 冬が終わりその七
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「鯉は揚げないでありますな」
「刺身か鯛飯かな」
「塩焼きでありますな」
「徳川将軍は塩焼きだったな」
この料理で鯛を食べていたというのだ。
「大抵は」
「徳川将軍は食べものの規制が厳しかったので」
「それでだな」
「お刺身はであります」
「どうも食っていなかったな」
「それで鯛もであります」
もっと言えば食える魚の種類も限られていた、毒のある河豚は言うまでもなく秋刀魚等も駄目であった。
「塩焼きでありました」
「それで食っていたな」
「そうでありました」
「そうだったな」
「だからであります」
まさにというのだ。
「幕府はであります」
「将軍にそうしたものを出していなかった」
「そうでありました」
「そして揚げることはな」
鯛、それをだ。
「それもだな」
「はい、普通はであります」
「しないな」
「これはその幕府の」
「他ならぬ初代将軍徳川家康がな」
「食べてあたったので」
そうして死んだという。
「ですから」
「余計にだな」
「しなかった様であります」
「そして今もだな」
「普通はしないであります」
「そうだな、だが」
「味はであります」
それはというと。
「確かに」
「美味いな」
「そのことは間違いないであります」
まさにというのだ。
「わしも思うであります」
「そうか」
「この前食したでありますが」
「それは素揚げ化天麩羅か」
「天麩羅であります」
こちらだというのだ。
「これが非常にであります」
「美味かったか」
「ですから」
それでというのだ。
「是非です」
「俺もだな」
「食すべきであります」
「そうか」
「では」
「食おう」
今度というのだ。
「そうしよう」
「では」
「今はすき焼きを食っているが」
それだけでなくというのだ。
「今度はな」
「鯉に鯛でありますな」
「それを楽しもう、だが鯛なら」
英雄はこの魚についてさらに話した。
「もう一ついい食い方がある」
「日本の料理じゃないね」
桜子は酒を飲みつつ英雄に明るく応えた。
「それは」
「そうだ、アクアパッツァだ」
「その料理だね」
「あれで食う鯛もな」
「実にだね」
「美味い」
そうだというのだ。
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