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おぢばにおかえり
第六十話 朝早くからその二十九

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「何かあったの?」
「何かって何があるの?」
 お母さんが言っている意味がわかりませんでした、それでこう返しました。
「一体」
「そこでそう言うのね」
「そこでって言われても」
 私としてもです。
「実際に何かあること?」
「だから二人で一緒にいたでしょ」
「ある筈ないじゃない、この町の裏通りとか案内しただけで」
「あら、本当にそれだけなの」
「そうよ、だから一体何があるのよ」
 本当にお母さんが言っている意味がわかりませんでした。
「本当にね」
「千里からもっと言えばいいのに」
「言うとかって何を言うのか」
 本当にわかりませんでした。
「お母さん変なこと言うわね」
「そこで変なことって思うのが駄目ね」
「駄目なの?」
「そう、駄目よ」
 こう私に言うのでした。
「そんなのだからね、そうしたことも教えるべきだったわ」
「教えるって何をよ」
「おみちのことや社会のことは教えたけれど」
「あとお勉強のこともね」
「そっちはお母さんは殆ど教えてないわよ」
「そうだったかしら」
「お料理やお掃除に、お洗濯のことは教えたけれど」
 女の子にとって大事なことをというのです。
「けれどね」
「何を教えてくれなかったの?」
「そこがわからないからね」
 どうにもという言葉でした。
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