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戦国異伝供書
第百八話 関東管領上杉家その四

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「おそらくそれに関東の諸侯でな」
「我等に従わぬ者がですか」
「ここぞとばかり馳せ参じ」
「そうしてですか」
「大軍となってな」
 そうしてというのだ。
「攻めてくる、十万はな」
「来ますか」
「それだけの大軍が」
「そこまでの軍勢が」
「おそらくな、越後の三万に」
 それにというのだ。
「その他にな」
「佐竹、宇都宮、結城といった家に」
「それに先に破った里見家もですな」
「皆兵を出して」
「そしてですか」
「十万程になる、そしてじゃ」
 その十万の軍勢でというのだ。
「こちらに来る」
「当家に」
「それだけの大軍で来ますか」
「河越の時以上の大軍ですな」
「十万になりますと」
「しかも河越の時はまとまりがなかった」
 あの時の敵はというのだ。
「しかしな」
「それでもですか」
「今度は違いますか」
「長尾殿が率いる軍勢は」
「そうなのですか」
「長尾殿は毘沙門天の化身と言われるまでの戦の達人」 
 上杉政虎となった彼はというのだ。
「だからな」
「今度はですか」
「勝てませぬか」
「容易には」
「まとまっているので」
「十万の大軍を率いられる将じゃ」 
「では」
「この度は戦えばですか」
「我等は負けますか」
「そうなりますか」
「戦って勝てる相手ではない」
 氏康ははっきりと言った。
「だからな」
「それで、ですか」
「それでなのですか」
「長尾殿が攻められるなら」
「それならですか」
「うむ、どの城を守りを固めてな」
 そうしてというのだ。
「決して戦うでない、鎌倉もじゃ」
「あの地もですか」
「守りを固め」
「そうしてですか」
「敵が来ても戦わず」
 そしてというのだ。
「そして小田原に来てもな」
「戦わぬ」
「そうしますか」
「ここまで来ても」
「戦ってはならぬ」
 決してというのだ。
「よいな」
「左様ですか」
「ではですな」
「我等は戦わず」
「籠城に徹しますか」
「長尾殿の気質を聞くに守りを固めて戦うつもりのない城は捨て置き」
 そしてというのだ。
「すぐにな」
「ここに来ますか」
「小田原に」
「そうしますか」
「だからな」
 それでというのだ。
「どの城も守り小田原もな」
「守りを固める」
「敵は真っ先にここに来るので」
「だからですか」
「余計にですな」
「守りを固めよ、そして十万の大軍を小田原に引き寄せ」
 そのうえでというのだ。
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