暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第53話:顔合わせ
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た挨拶の一文に、颯人は思わず首を傾げた。

「えっと、透……でいいか? お前ってもしかして──?」

 見た所シャイだとか他人と接するのが苦手なようには見えない。そんな彼が口を開かず筆談で会話を済ませている事に、颯人は半ば確信しつつ言葉をぼかして問い掛けた。

 透は透で、颯人がまだ明かしていない喉の傷に気付きつつあることを察して、薄く笑みを浮かべると首に巻いているマフラーを少しずらした。この為に説明の文章を書くのは手間だし、態々文にするのは少し辛い。何より見てもらった方が手っ取り早い。

 マフラーに隠されていた痛々しい傷跡を見て、颯人は全てを察すると何も言わずにマフラーを引っ張り上げて傷跡を隠した。これはあまり他人がジロジロ見ていいモノではない。

「……悪かった」

 颯人が素直に頭を下げると、透は気にしていないと言う様に首を左右に振った。それを見て颯人は肩から力を抜いた。

 こうして直に話して数分しか経っていないが、2人は既に互いに仲良くなれる事を確信していた。

 それはこの2人がある意味で同志だからだろう。勿論、同じ魔法使いと言う意味ではない。
 颯人も透も、1人の女性を愛しその相手の為に全力を注げる男だった。互いに相手を似た人物だと、ある種のシンパシーを感じていたのだ。

「色々あったが、これからは仲良くやっていこう。宜しくな」

 親愛の意味を込めて手を差し出す颯人。握手を求めていると分かり、透は笑みを浮かべながら頷きその手を取ろうとした。

「ちょっと待った!」

 その瞬間、それまで響と共にクリスと親睦を深めようとしていた奏が割って入ってきた。突然2人の悪手を妨害した事に、クリスは奏が透の事を信用していないのではと疑い噛み付いた。

「おい、透に何か不満でもあるってのか!?」

 透を理不尽に疑われたと思って不機嫌になるクリスだったが、奏はそれに構わず透と握手をしようと差し出している颯人の腕を掴む。そして彼の手を掴むと、容赦なく引っ張った。
 すると彼の右手はいとも簡単に抜けたではないか。その光景にクリスだけでなく、颯人と握手をしようとしていた透も響と翼の2人も驚愕した。

「えっ!? か、奏さん!? 颯人さんの手がッ!?」
「あっ! 落ち着いて立花! 颯人さんがどういう人か忘れた?」

 傍から見ると奏が颯人の右手を引き千切ったとしか見えない光景に混乱する響に対し、翼は颯人の性格や特技から状況を正確に理解していた。
 要は颯人が何時もの如く手品で悪戯を仕掛けようとして、それを奏に看破されたと言うだけの話である。

 横からネタ晴らしをされたことで颯人は一瞬不満そうな顔をしたが、しかしその顔は直ぐに不敵な笑みに変化した。

「良く分かったじゃないか。流石だよ
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