第96話『予選A』
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腕輪に付いた水晶でリアルタイムで確認できます』
「へぇ〜」
大まかなルールは予想通りだったと、晴登はひとまず安堵。もしここで捻ったルールでも出されていたら、正直焦ってたと思うし。
それにしても、この腕輪にそんな機能が付いているのか。とても参考になるし、ありがたい限りだ。
『コースは全長15km。途中には様々なギミックが仕掛けられています。それらを突破しつつ、ゴールを目指してください』
「……だと思ったけどね」
やはりと言うべきか、このレースはただのマラソンとはいかないらしい。
ギミックか……突破できる難易度ならいいのだが。というか、そもそも15km完走できるかも怪しい。そんなに走ったことないぞ。
「魔術使えば何とかなる、かなぁ……?」
魔術を行使しながらの走行は、スピードこそ出るだろうが、体力を余分に消費する。もしペース配分を誤れば、魔力切れで即リタイアだ。その事態だけは避けなくてはならない。
『それでは皆さん、スタート地点へと移動してください』
もうルール説明を終えたのか、ジョーカーがそう誘導してきたので、周りについていく感じで従う。
そして、さっき見た垂れ幕の元に選手が集った。ちなみに晴登は集団の後ろ側に位置している。
……だって、周りが大人ばっかりだから、スタートした瞬間に押し潰されそうで怖いんだもん。
「あぁ……緊張するなぁ」
ただでさえ、大会に出るという経験が皆無なのに、加えて終夜からの要求もある。背中にのしかかるプレッシャーはかなりの重さだ。
予選を突破するには好順位をとらなければならない。そして予選を突破できるのは16チーム。となると、単純に考えて目指す順位は16位以内──最低でも30位以内だろうか。
大人が100人以上いる中で30位以内……かなり絶望的な状況である。でも、成し遂げなければならない。部員として、部長を持ち上げるのは当然のことなのだから。
「──あれ、あなたは確か……三浦君?」
「え? あ、えっと、猿飛さん……でしたっけ?」
「うん、そう。猿飛 風香」
不意に横から声をかけられたので振り向くと、そこにはスポーツウェアに着替えた風香が立っていた。相変わらずクールで、今も目線だけをこちらに向けて話している。
「あまり緊張しすぎない方がいいよ。魔術の加減が効かなくなるから」
「は、はい」
「それじゃ、お互いに頑張りましょう」
「よ、よろしくお願いします!」
風香の手短な助言にそう言葉を返すと、何だか気が楽になったように感じた。アドバイスもそうだが、知り合いに会ったという安心感が大きいのだろう。
彼女はもう、集中して前方を見据えている。
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