第百七話 国府台の戦いその十
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「長尾殿の後ろを脅かしてもらい」
「そこを攻めるのですね」
「そうしましょうぞ」
「そうして帰ってもらいますな」
越後までとだ、氏康も述べた。
「左様ですな」
「その様に」
まさにというのだ。
「そうしてもらいましょうぞ」
「それも戦ですな」
「そうです」
強敵とは直接干戈を交えず後ろを狙いそのうえで去らせるのもというのだ。
「勝てぬならです」
「戦わず」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「去らせるのです」
「それがよいですな」
「ましてや長尾殿は」
彼のことをさらに話した。
「領土を求めない方」
「越後一国でよし」
「そうお考えです」
「だからですな」
「尚更です」
領土を求めない、すなわち奪われないならというのだ。
「去ってもらう様にです」
「しますな」
「あの御仁には」
「そういうことですな」
「その様にしましょう」
「ですな、しかも当家の守りは固いです」
氏康は確かな声で述べた。
「それぞれの城は互いに助け合う様に築かれていて」
「個々の城も堅固ですな」
「しかも小田原城は」
本城であるこの城の話もした。
「そうおいそれとはです」
「攻め落とせませぬな」
「はい」
まさにというのだ。
「あの城は」
「ならばです」
「尚更ですな」
「戦わぬことです」
去ってもらうのを待つべきだというのだ。
「やはり」
「さすれば」
「その時は」
「その様にします」
「それでは」
こうした話もした、そしてだった。
氏康は小田原に戻るとあらためて政にかかりそうしてだった、上野か下総に兵を進めることにしたのだが。
家臣達の意見はここで二つに分かれた。
「上野では」
「下総では」
それぞれの意見が出ていた。
「ここで上杉家を追い出すべきです」
「いえ、下総を手中に収めましょう」
こう言っていた、だが。
幻庵はここでこう言った。
「殿、上野かと」
「あの国ですか」
「はい、下総はもうです」
「里見家を散々に破ったので」
「もうあの家はです」
それこそというのだ。
「下総どころか上総の北もです」
「保てませぬか」
「もうその様な力はありませぬ」
「だからですな」
「下総や上総の北の諸家はです」
「自然とですな」
「当家になびき」
そしてというのだ。
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