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戦国異伝供書
第百七話 国府台の戦いその五

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「そしてです」
「そのうえで、ですな」
「一方はそのまま川を渡ります」
 その江戸川をというのだ。
「そしてもう一方はです」
「敵の後ろに回ってですな」
「そうしてです」
「攻める」
「その通りです」
 こう氏康に話した。
「是非」
「それではです」
「はい、川を正面から渡って攻める軍勢は」
 ここで氏康は富永正家長身の男と遠山直景面長の顔の男の二人を見て彼等に告げた。
「お主達にじゃ」
「任せて下さいますか」
「そうされますか」
「うむ、お主達は兵を率いてじゃ」 
 そうしてというのだ。
「よいな」
「江戸川を渡り」
「そしてですな」
「台地におる敵の軍勢に向かえ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「その様に」
「頼むぞ、ではわしはな」
 氏康はあらためて言った。
「台地の北東に川を渡ってじゃ」
「向かわれますな」
「うむ、お主にも来てもらう」
 綱成にも話した。
「そちらにな」
「そうしてですな」
「敵を南と北東から攻め」
 そうしてというのだ。
「打ち破る」
「如何に台地という高い場所で守っていても」
「兵が少ない」
「六千の兵を二手に分ける」
 そうすればというのだ。
「そうすればな」
「半分ずつなら三千ずつですな」
「こちらはそうしても一万ずつ」
「やはり兵の違いは大きいですな」
「そして前から攻める兵は七千とする」
 氏康は笑って話した。
「してじゃ」
「我等はですな」
「一万三千を率いてな」
 そうしてというのだ。
「敵を後ろからな」
「攻めますな」
「そうする、例え三千の兵が来ても」
「一万三千ならば」
「楽に敗れる、お主もおるしな」
 北条家きっての猛将である綱成に告げた。
「だからな」
「それで、ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「ここはな」
「それで、ですな」
「お主にも来てもらってな」
「敵を北東に回り込みそこからですな」
「攻めるぞ、よいな」
「それでは」
「ではその様に動くとしよう」 
 氏康はこう言ってだった。実際に兵を二手に分けて台地の南そして北東から攻めさせた。そうして攻めるとだった。
 敵はやはり兵を二手に分けた、南から来る兵に備えかつ氏康が率いる兵を見てそちらにも兵を向けた。だが。
 その兵の動きを見て氏康は笑みを浮かべた。
「読み通りじゃ」
「ですな」
 北条家の整った顔が日焼けした顔の北条氏照が応えた。
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