暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第52話:通じ合う2人
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恨みも憎しみも抱いていない。彼は全てを受け入れているのだ。己の身に降りかかった災難も、何もかもを────

「……クリス君の両親は、君達2人に夢は叶えられると言う揺るがない現実を見せたかったんだろうな」
「何だって?」
「大人になったら背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだって、ちったぁ増える。子供の頃はただ見るだけだった夢も、大人になったら叶えるチャンスも大きくなる。夢を見る意味が大きくなる」

 紡がれる弦十郎の言葉を聞いて、透は大きく頷いた。彼が頷いたのを見て、クリスは2人の顔を交互に見比べた。

「お前の親は夢を見る為だけに戦場に行ったんじゃない。歌で世界を平和にするって言う夢を叶える為、自ら進んでこの世の地獄に踏み込んだんだ。きっとな」

 その言葉はクリスの胸に深く突き刺さった。本当は、クリスにも分かっていた。
 クリスの両親は彼女の事を大切に思っていた。思っていたからこそ、夢を叶える瞬間を見せて彼女の心を希望の光で照らそうとしたのだ。ただそれが、理不尽と言う陰で覆われてしまっただけで。

 恐らく透はもっと早くからその事を理解していたのだろう。理解し、そして信じていたからクリス達について行ったのだ。

「じゃあ、夢を叶えようとする前に夢を、歌を奪われた透はどうなるんだよ? 透は何でそんな風に笑っていられるんだよ? 返してくれよ…………透の声を、夢を、歌を返してくれよ」

 堪らずその場に崩れ落ち、静かに涙を流すクリスを透が抱きしめ、その2人を弦十郎が優しく抱きしめた。医者でもない彼に今できる事は、少しでも人の温もりを与えてやる事だけだったから。

 崩れた館の中に、クリスのすすり泣く声が響く。

 それを止められるのは、この場にいる者の中でただ1人────

「…………」

 涙を流すクリスを見て、透は何かを決心したように顔を上げると徐にクリスから離れ、カリヴァイオリンで演奏し始めた。突然の彼の行動に、クリスだけでなく弦十郎とアルドも彼に注目する。

「透、何を……?」

 透の行動が理解出来ず、クリスは涙を流しながら問い掛ける。それに対し、透は笑みを向けると演奏を続けた。

 そんな彼の行動の意図に、クリスよりは冷静だった大人2人はいち早く気付いた。

「何かを……伝えようとしているのでは?」
「あぁ。声を、歌を歌えない代わりにヴァイオリンの音楽で想いを伝えようとしているんだ。それを理解できるのはただ1人、君だけだ」

 言われるまでも無く、クリスは透の想いを受け取ろうと心を落ち着かせる事に専念していた。
 懸念があるとすれば先程まで頭が混乱していた為、透の想いを理解できるまでに時間が掛からないだろうかと言う事だったがそれは杞憂だった。透の演奏は、それだけでクリ
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