暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第52話:通じ合う2人
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ある声だと思ってはいたが、自己紹介を受けてクリスは漸く弦十郎の事を思い出した。通信機越しにではあるが、自分たちの事を助けたいと言っていた男だ。
 それを思い出した瞬間、クリスは透の陰に隠れながら彼を睨みつける。強い警戒心を感じはしたが、肝心の盾にされている透が弦十郎に困ったような笑みを向けている為迫力に欠けている。今の彼女の姿は寧ろ微笑ましくもあった。

「それと、俺が何故君らを守ったかだったな。それは単純だ。ギアの有る無しじゃなく、俺がお前達よか少しばかり大人だからだ」

 大人…………弦十郎が口にしたその単語に、クリスは顔を歪めた。クリスにとって、大人と言う存在はそれだけの存在だったのだ。

「また大人か……あたしは大人が大嫌いだ! 死んだパパとママも大嫌いだ! とんだ夢想家で臆病者、あたしはあいつらとは違う!? 戦地で難民救済? 歌で世界を救う? いい大人が夢なんて見てるんじゃ……あ────」

 感情のままに大人と言う存在に対する不満を吐き出すクリス。その不満は彼女の両親、そしてその2人が描いていた夢にまで及んだ時…………クリスは己が何を口にしたのかを自覚し顔から血の気が引いた。

 弾かれるように透の方を見ると、彼はクリスに笑みを向けている。が、その笑みには隠しきれない悲しさが滲み出ていた。

「ッ!? ち、違うんだ、透。そんな……そんなつもりは、無かったんだよ。あたしは…………あたしは────!?」

 言うべき言葉が見つからず、頭の中がぐちゃぐちゃになりクリスは支離滅裂な事しか口に出来ずにいた。今にも泣きだしそうな顔で透に近付く。が、あと一歩で触れられると言うところでクリスは先に踏み出す事が出来ずにいた。
 おずおずと手を伸ばすが、触れそうになると見えない力が押し返しているかのように引っ込んでいく。少しでも触れたら透が壊れてしまうと、そう思っているかのようであった。

 そんなクリスの頭に、弦十郎が手を置いた。

「俺は君らがどんな辛い目に遭ったのかを知らない。想像する事しかできない。だが彼が、お前の両親と同じ夢を抱いていたのだという事は分かる。その夢を、もう叶えられないのだろうという事も……」

 弦十郎が目を向けると、透は首に巻いたマフラーを少しだけずらした。そこに見える傷跡に、思わず痛ましい顔をせずにはいられない。

「……すまなかった。助ける事が出来なくて」

 辛そうに顔を歪めながら透に向けて弦十郎が頭を下げると、透は彼に頭を上げさせ儚い笑みを浮かべながら首を左右に振った。そこには悔恨も何も感じられない。どこまでも透き通った、純粋に弦十郎を気遣っている様子が見て取れた。

──この少年は、何処まで優しいんだ──

 弦十郎には分かった。透はクリスとは対照的に、大人に大して何の
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