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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン33 過去からの迷いし刺客
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る通常モンスター。しかし糸巻はそこで何かに勘付いたのか、ターンが移ったことでカードを引くペストマスクに対して突然ニヤリとふてぶてしく笑いかけた。

「いや、なるほどな。ライトニングの裏に見えるテンペスト、それにラビリンス・ウォールか。カードのチョイスがいちいち渋いせいで戸惑っちまったが、ようやくアタシにもそのデッキのからくりが見えてきたぜ」
「……」

 やはり何も言わず掲げたカードは、黄金の封印櫃。デッキからカードを1枚除外し、2ターン後に手札に加える通常魔法。続いてデッキから嵐征竜−テンペストのカードが除外されたことにより、そのモンスター効果が発動される。

「デッキから風属性のドラゴン族1体を無条件でサーチする……もう、アタシにも分かるぜ。この局面で持ってくるべき風ドラゴンなんて、あの1体しかいないんだからな。アンタが口をきく気がないってんなら、アタシが代わりに宣言してやるよ。そのカードの名は、デブリ・ドラゴン!」
「……」

 デブリ・ドラゴン 攻500
 迷宮壁−ラビリンス・ウォール− 守3000

 まるでその声に応えたかのように、ペストマスクがデッキからさらに1枚のカードを抜き取って公開する。サーチされたそのカードの名は、糸巻の宣言通りのデブリ・ドラゴン。召喚成功時に墓地から攻撃力500以下のモンスター1体を蘇生する、対応範囲の広さが売りの強力なチューナーモンスター。
 そして即座に召喚されたそれの効果によって、2人の足元から石造りの迷宮が地響きを立てて生えてくる。

「岩投げに対応する分他の種族よりも墓地に送りやすく、なおかつデブリの蘇生範囲でもある珍しいレベル5モンスター。なかなかの着眼点だ、そこは褒めてやるよ」
「相変わらずの上から目線。年は取っても変わらないな、糸巻」
「……っ、なんだ、ちゃんと喋れたんじゃないか」

 ぱちぱちと鷹揚に手を叩く糸巻に、ついにペストマスクがその沈黙を破る。マスク自体に何らかの加工が入っているらしく、不自然にくぐもったその声だけでは目の前にいるのがやはり男だったということしかわからないが、それでも彼女の記憶の奥で何か反応した部分があった。間違いなく、この男にアタシは会ったことがある。それも1度や2度ではなく、もっと高い頻度でだ。
 しかし、思い出せたのもそこまでだった。プロデュエリストとしての記憶をすべてひっくり返しても、この声の持ち主と一致する対戦相手の顔が思い浮かばない。プロ、アマ、あるいはイベントで特別に戦った子供を含む素人さん。1度でもデュエルをした相手のことは鮮明に覚えているはずの糸巻だったが、それでもこの声の主がどうしても出てこない。喉まで出かかっているのが彼女自身わかるだけ余計にもどかしいが、いくら掴もうとしても記憶はするりと彼女の脳から消えて行ってし
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