ターン33 過去からの迷いし刺客
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ターを伏せ、さらに伏せカードを置く。ただそれだけで、ターンが糸巻に移ったことをデュエルディスクは示していた。そんな不気味なほどの沈黙に警戒しつつ、軽く探りを入れながら自分もカードを引く糸巻。
「おいおい、アタシにカードを見せちゃくれないのか?リバース戦法の使い手なのか、防御から始まるようなデッキなのか……それとも、恥ずかしいぐらいに事故ってんのか?」
ついでに挟まれた軽い挑発は、単に彼女の趣味である。尤も彼女の基準からすれば、こんな程度は挑発の内にも入らないのだが。
「アタシのターン。さて、どうすっかね?屍界のバンシーを召喚だ」
屍界のバンシー 攻1800
青白い肌に腰まで伸びた白髪、そしてそんな体に負けず劣らず青白い布切れのような服。薄幸美人という言葉のよく似合う涙目の女性型モンスターが、ぽっかりと空いた製造ラインに呼び出される。
「まずは様子見……屍界のバンシーでセットモンスターに攻撃、涙雨のリフレイン!」
屍界のバンシー 攻1800→??? 守1800
すうと息を吸ったバンシーが、開いた口からソプラノボイスと共に衝撃音波を放つ。セットモンスターめがけて飛んでいったそれは攻撃対象を表にし、しかしその破壊には至らず伏せられていた小さな緑のドラゴンの姿を露にするだけにとどまった。糸巻としては今の攻撃で戦闘破壊、ついでにその衝撃でペストマスクを引きはがせないかとの目論見もあったのだが、さすがにそれは虫が良すぎたようだ。
しかしそんなことよりも彼女の気を引いたのは、今の攻撃によってその姿を見せた小さなドラゴンだった。あまりに予想外なその1枚に、小さく眉をひそめる。
「風征竜−ライトニングだと?」
風征竜−ライトニング。かつて一世を風靡した結果として牙をもがれ翼を失い、爪を引きちぎられてなおも欠損箇所をダークマターで補って戦い続けたとまで揶揄された4種8体のドラゴンのうち1匹、その名の示す通り風属性のライトニング。しかしその本分はあくまで手札から発動する自身の効果であり、よほどのことがない限り通常召喚されるようなことはないカードでもある。
「……おいおい。まさかほんとにその手札、ライトニングを伏せなきゃどうしようもないぐらいに大事故起こしてるのか?」
警戒半分、呆れ半分といった調子の呟きにも、ペストマスクは一言も反応しない。
もっとも、本気で手札事故を起こしているなどとは糸巻も信じてはいない。本番でそんなへまをやらかすほどにデッキとの息があっていないのならば、それはもうプロデュエリスト以前の問題だというのが彼女たちの共通認識だからだ。つまりあれは、全て予期された何も問題のない動き。だが、何のため?
よくできたロボットでも相手にしているような感覚に陥りながら、気を取り直
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