暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン33 過去からの迷いし刺客
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はまだがらんと空いたままであり、機能性のみを追求したデザイン皆無の内装と相まってなんだかひどく殺風景な光景が彼女の前に広がっていた。その中で唯一目につくものといえば、塔の中央からまっすぐに伸びたエレベーターとそれにゆったりと巻き付くような構造で2階へと伸びる螺旋階段。
 そこまで認識した時点で立ち止まったことに、さしてはっきりした理由があったわけではない。強いて言うならば、これもデュエルポリスの勘だ。そして、その勘が正しかったことはすぐに分かった。エレベーターのランプが突然点灯し、糸巻の目の前でその扉が開いたのだ。

「お出迎えか?わざわざ悪いな、手土産ぐらい持ってきてやりゃよかったか」
「……」

 周りの風景のせいもあってどこか抗菌服を連想させる白いスーツに、首から上をすっぽりと包み顔を隠すペストマスク、そしてそんな奇天烈な格好を一気に現実的な存在に落とし込むアイテム、左腕にデュエルディスクを装着した男。ぴっちりとその手を隠す白手袋まで身に着けているせいでまるで素肌が見えず、糸巻の観察眼をもってしても性別は不詳なのだが、もしあれが男装の女だとしたら何がとは言わないがとある部分がかなり大きな方ではあるがあくまでまだ中学生レベルの竹丸や、下手をすると同年代の平均以下である八卦にすらサイズで劣るほぼ壁のレベルであるという点から男だと思っておくことにした。
 そして深い意味はないが自分の胸に手を当て、色々と視線を集めることの多い肉の塊がそこに今日もぶら下がっていることを確かめる。今日も邪魔な代物ではあるが、ともあれそれは間違いなくあるべき場所にあった。

「っと、そうじゃねえな。医者だか何だか知らねえが、さっさとやろうぜ」

 デュエルディスクを構えると、ペストマスクも同じようにデュエルディスクを起動する。糸巻の知る限り、あんな珍妙な格好をしたプロデュエリストはいない。これまでの知識の通用しない未知の相手ではあるが、本拠地のこの場所を任されたということはそれだけ腕の立つことは間違いないとみていいだろう。
 ……面白い、腕が鳴る。

「デュエル!」
「……」

 あくまで一言も喋るつもりはないらしく、無言のままに初期手札の5枚を引くペストマスク。元から口がきけないのか、それとも喋れない理由が別にあるのか。例えば、もし口を開いたらその声だけで糸巻にそのペストマスクの下の正体が感づかれてしまうような。
 しかし、いくら本人が黙っていようとカードは嘘をつかない。糸巻の頭の中には過去のプロデュエリストのことは大体入っており、デュエルを続けていけば使用カードや妨害を撃つタイミングなどの思考パターンからマスクの下の正体を見極めることも決して夢物語ではないはずだ。

「……」

 マスク越しに手札を一瞥したペストマスクが無造作にモンス
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