暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン33 過去からの迷いし刺客
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もアンタが後ろから来た時点で問答無用で叩きのめすからな」
「……それ僕が言うのもなんだけどさ、もしこの僕が偽物で後から本物が追いかけてきた場合、すんごいかわいそうなことにならない?」

 そう呆れながらも、そこから反論する様子はない。だから糸巻も冗談めかしてニヤリと笑いながら、しかしきっぱりと大真面目に返す。

「おう。だからここにいるアンタが本物なことを祈っといてやるぜ」
「僕はケーキ屋さん兼神官。祈るのは僕の仕事よー?」

 ぶつくさ言いながら、清明も3つの塔と2つの入り口に視線を移す。

「んで、糸巻さんはどっち行きたいの?」
「なんだ、アタシが選んでいいのか?んじゃアタシ左な」
「んじゃ僕右ね。うちの神様(ブレイン)に生半可な変装は通用しないのよ。だからこの糸巻さんは、紛れもなく本物の糸巻さんだよ」
「……その電波っぷり、アタシもアンタが本物に見えてきたな。ま、どっちにしろ挟み撃ちはやるけどな。いよいよ最後の大喧嘩だ、ド派手にかましてやろうぜ?」
「いいねえ、どうせ乗り掛かった舟なんだ。元々僕はデュエルがしたくてはるばるここに流れ着いたんだし、このままどーんと暴れさせてもらうよ」

 糸巻太夫、そして遊野清明。普段の価値観はまるで異なるものの、おおざっぱでいい加減でちゃらんぽらんで人生をハプニング込みで楽しんでいる節があり、そして強い相手とデュエルできるのであれば多少の不具合には目をつぶる筋金入りのバトルジャンキー……ろくでもない点でばかり意見が一致するものだから、確かに話だけは早いが巻き込まれる側としてはたまったものではないコンビであった。

「んじゃ、中央でまた会おうじゃないの」
「おう、途中で返り討ちになんてされるんじゃねえぞ」

 それっきりで分かれ、それぞれ左右の扉へと近づいていく。感知機能が生きているらしく無音で上へと開いた鋼鉄製の扉に、2つの影がためらうことなく吸い込まれていった。





 塔の内部へと入り込んだ糸巻の背後で、すぐに扉が再び閉まる。ここから先は彼女1人、頼れるものは自分のみ。しかし、それは彼女にとって日常であったはずだ。半年前、鳥居が彼女の部下として配属されるまで、彼女は家紋町唯一のデュエルポリスとしてチンピラやプロ崩れ相手に睨みをきかせていたはずだ。
 だというのに、なぜこんなにも背中が涼しいような気がするのだろうか。前に1人だった時には、感じることのなかった感覚。鳥居がこの町に来てからも、やはり覚えることのなかった感覚。にもかかわらず、今この時に限って……。

「……アホくさ」

 思考を打ち切り、代わりに足を動かし歩を進める。余計なことに思考を裂いていては、見えたはずのものも見えなくなる。
 本来はずらりと工業用機械が並ぶのであろうスペースも今
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