暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン33 過去からの迷いし刺客
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ない。重要なのは彼がプロ時代の糸巻のデュエルの癖や使用カードを完璧に、下手をすれば当時のライバルよりも高い精度で把握しているということだ。

「あの爆発事故から、俺もすっかり仕事がなくてな。自粛中、何度も伝えたろう?収入はグッズ販売でしばらく食い繋ぐ程度には持つ、お前なんかはコンビニに行くだけでいちいち目立つんだから頼むから何もしないで家で寝ていてくれと。それをデモ行進なんかに参加して……まあ、口うるさく言ったぐらいでお前が大人しくしているなんて思った俺も馬鹿だったわけだが。らしくもないミスだったな、あれは」
「あの時は……その、悪かったよ」
「全くだ。お前はデュエルポリスに引き抜かれたが、俺はあの一件で完全に干されたからな」

 罪悪感からやや目を逸らし、13年越しに口にした謝罪の言葉は、しかし当然のごとくばっさりと切り捨てられた。

「とはいえ、今更恨み言を言うつもりはない。それどころか、お前には感謝していることもあるんだぞ?それが、これだ。食っていくために苦し紛れに手にしたカードだったが、お前を見慣れていたおかげで不思議と周りの奴らのレベルが低く感じてな。荒稼ぎして今じゃ『ノーネームド』なんて面白みもない仇名まで貰ったよ」

 そう言って左腕のデュエルディスクを軽く持ち上げ、ポンポンと軽く叩いてみせるペストマスク……引戸。
 ノーネームド、そう呼ばれる経歴不詳の裏デュエリストがいるという話だけは、糸巻も話の種にぼんやりと聞いたことはあった。とはいえ噂は噂と話半分に聞き流していたのだが、つくづく世の中は狭いものだと実感する。

「それから少し前までは本源氏や七曜と同じところに所属していたんだがな、つい先日巴からヘッドハンティングを受けてな。どうやら奴は、俺の前職がすぐにピンときたらしい。お前の相手に送りつけるには最適だとでも思ったんだろう。どうせこの組織もそろそろ見限るときが来ていたし、受けてやったのさ。お前の顔も、13年ぶりに拝みたかったしな」
「結局巴のクソ狐かよ……残念だぜ、アンタとはこんな形で会いたくなかったのによ」
「そうか?俺は割と、お前とはいつか戦ってみたかったがな。さて、そろそろデュエルに戻るとするか。お前はさっき俺のダメージ・ダイエットの発動タイミングをミスのたぐいだと思ったようだが、それは違う。馬頭鬼でもバンシーでもなくテンペストにレアンコイリアを使ったプレイングといい、お前は強気で突っ張ってくるタイプだと信じていたよ」
「……何が言いたい?」

 嫌な予感に声を低め、呟くように問いただす。引戸はそれにただ口の端を歪めて笑い、1ターン目からずっと伏せられていたままのカードが表になる。

「すでにリソースは使い切った、なら次はわかるな?当然、俺が攻める番だ。トラップ発動、イタチの大暴発。合計攻撃力
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