ターン33 過去からの迷いし刺客
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ばっかだったからな、そういう発想自体完全に抜けてたわ」
「いやいやだからっておかしいでしょ、糸巻さんのデュエルディスク!それ、なんか妨害電波が出せるって聞いたよ!?」
「アホか。こんなバカでかい電波塔、アタシも10年以上この仕事やってて初めて見たような代物だぞ?このデュエルディスクに入るようなアンチ『BV』妨害電波じゃ出力が違いすぎて焼け石に水、引っぺがすどころかノイズを起こすこともできないわい。というかそもそもな、そんなもんこの霧突っ込んでからもう何回も試してんだよ」
食って掛かる清明を一蹴し、距離だけは保ったまま目の前で不気味に稼働し続ける3つの塔を見上げる糸巻。両端の大きな方にはその床、つまり今彼女たちが立っている位置から入れるように鋼鉄製のドアがはめ込まれているが、中央の塔には見た感じ入り口らしきものはない。この手の建物にはあってしかるべき、非常口や非常階段すら彼女の位置からは確認できなかった。
次いで上に目線を動かすと、存在しない入り口の代わりだろうか。左右の塔の中腹辺りから渡り廊下が伸びることで、中央と行き来する経路が確保されている様子が見えた。つまりこの3つの塔には、合計でもたった2か所しか出入口が存在しないことになる。
「ったく、ガキの落書きでも実体化させたのかよ?とんでもねえな」
もし火事でも起きた場合にどうなるかを考えるとこれはとんでもない違法建築だが、同時にこの塔は外観だけで糸巻にいくつものことを物語ってもいた。この中の人間の安全を一切考慮しないつくりは、裏を返せばこの場所は本来、人が働くことを想定されていない……つまり生産ラインの全自動化、完全機械化が成り立っていることになる。突き詰めればそれは、このプラントの所有者がそれだけの機械を動かすことができる唸るような資金の持ち主であるということの証明だった。
改めて巴が最初に叩き売り、やや遅れて自分も乗り込んだこの喧嘩のスケールの大きさを思い知る糸巻。もっとも、だからといって怯みも物怖じもしない。それはこの女の美点でもあり、時に話にならないレベルの欠点でもあった。バカの頭脳はプレッシャーを感知しない、そう言ったのはどこの誰だったか。
しかし面と向かって糸巻にそんなことを言う人間は極めて限られ、その数少ない人間である巴や七宝寺も今この場所にはいない。そのため誰にも邪魔されることなくじっくりと考えを巡らし、ややあってゆっくりと口を開いた。
「……じゃあ、こんなのはどうだ?見た感じ、入り口はこことそっちの2か所だけみたいだ。どうせ2人で固まってカチコミしてももう片方から逃げられるだけだし、挟み撃ちしてやろうぜ」
「僕が偽物でも、少なくとも後ろを取られることはないってわけね」
「飲み込みが早くて助かるぜ。当然違う道を行くからには、どんな理由があろうと
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