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水着だけは嫌 
第三章
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「歌番組の収録があって雑誌のインタヴューにね」
「後ドラマの打ち合わせですよね」
「今日も忙しいわよ。それが終わったら」
 どうするかと。志津子はさらに言う。
「部屋に帰って。けれどその前に」
「その前に?」
「いいお風呂屋さん見つけたのよ」
 志津子の顔が綻ぶ。実は彼女は無類0の風呂好きなのだ。それもスーパー銭湯が好きで優子もよく誘うのだ。
 それで今もだ。優子を誘ったのである。
「じゃあいいわね」
「はい、それじゃあ」
「優子ちゃん私には裸になるのに」
 それでもだということも思ってしまった。
「水着にはなれないのよね」
「すいません、本当に」
「恥ずかしいのかしら」
 とにかくその理由がわからなかった。とにかく水着にならない優子だった。無論下着にもだ。志津子にはそのことが不思議で仕方がなかった。
 その彼女と仕事の後でスーパー銭湯に入る。まずは脱衣場で服を脱ぐ。
 そこでもやはり優子は見事なスタイルだ。小柄だが均整の取れているプロポーションだ。それを見て志津子はまた言う。
「本当に優子ちゃんってね」
「水着似合う、ですよね」
「絶対に似合うわよ」
 こういささか強張った顔になっている優子に述べた。
「胸だってあるしお尻だって奇麗だし」
「ダンスもしているからですよね」
「そうよ。いいスタイルは運動が作るものよ」
 優子のスタイルも然りだというのだ。
「わかったわね。これからもね」
「はい、運動は続けます」
「スタイルもアイドルの売りよ」 
 顔に歌だけではないのだ。
「これからもよ。ただ」
「ただ?」
「何か今の優子ちゃんってね」
 優子の表情を見てのことだった。
「強張ってるけれど」
「そ、そうですか?」
「そういえば私と一緒にお風呂に入る時いつもその顔になるわよね」
 このことに今気付いた。
「それどうしてなの?」
「顔、強張ってますか?」
「何か緊張して何処かに力入れてるみたいな」
 そうした顔になっているというのだ。
「どうしてなの?一緒にお風呂に入る時は」
「気のせいですよ。ところで」
「ところで?」
「志津子さんって前から思っていましたけれど」
 優子は目を泳がせて強張ったものに必死さも入れて志津子に話す。自分と同じく一糸まとわぬ姿になっている彼女に対して。
「スタイルいいですよね」
「あっ、そう言ってくれるのね」
「背が高くて」
 小柄な優子と比べると十五センチ位の違いがある。
「胸も大きいですし脚も奇麗ですし」
「胸は実は自身があるのよ」
 その張りのある大きな胸を上下に揺らしてからの言葉だった。
「それに脚は学生時代陸上部だったからね」
「それでなんですか」
「そうよ。今もランニングをしているから」
「だからですか」

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