第三章
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傷だらけの上半身にネクタイをかけている。そして下は黄色く汚れた白ブリーフに黒の革靴、そして同じ色のナイロンの靴下だ。尚且つトレンチコートを両手で思いきり開き蟹股でそのきばんだ股間を良晴に誇示して無言で立っている。
その者を見て良晴は見送りに来た商店街の人達の方を振り向いて尋ねた。
「警察呼ばないのかよ」
「ああ、そう言うんだね」
「やっぱりそう言ったね」
「変態だろ」
その白ブリーフ男を見ての言葉だ。脛毛が嫌な艶かさを醸し出している。
「どっからどう見てもな」
「そう思うのも当然だけれどな」
「けれどこの人がなんだよ」
「ボディーガードの人だよ」
「それでガイド兼通訳もしてくれるから」
「世界で凄腕の裏の世界の人だから」
「おい、裏の世界は変体がスタンダードかよ」
その百二十パーセントの格好を見ての言葉である。
「裸ネクタイにブリーフでいいのかよ」
「しかもこの人は生まれてからお風呂に入ったことがないそうだよ」
「ブリーフも洗わない主義だってさ」
「凄いよね、もう匂ってくるよね」
「火山の噴火口みたいな匂いが」
「そういえば酷い匂いだな」
明らかにその白ブリーフ男からの匂いだった。
「しかもテレビに出るんだよな、このおっさん」
「あっ、裏の世界の人だから身分は隠してね」
「しかもCG処理と映像処理でテレビに出るのは美人のお姉さんだから」
「だからそのことは安心して」
「ちゃんと放送できるってさ」
「けれど俺はこの人と一緒だよな」
良晴はその変態を指差して商店街の人達に問う。
「向こうじゃどうか知らないが日本じゃこれで町に出たら絶対に通報されるぞ」
「実際にいつも職務質問されるらしいしね」
「服を着ろと」
「というか着ろよ」
良晴は常識から言った。
「幾ら何でも白ブリーフ一枚とかないだろ」
「けれど腕は凄いよ」
「格闘なら何でもござれ」
「何日食べなくても普通に活動できるし」
「赤道直下でも南極でもこの格好で普通に動けるよ」
「しかも凄腕のスナイパーでもある」
「当然どの国の言葉でもオッケーだよ」
「変態なのにかよ」
それこそどこぞの新聞の社員でも通用するレベルの変態だ。
「それでもかよ」
「うん、実力は間違いないからね」
「こっちでもちゃんとチェックしたから」
「動物園の虎をその体臭だけで気絶させて」
「自衛隊の戦車を前の出っ張りで持ち上げたよ」
「その下着の前から銃を出して百発百中だったしね」
「腕は間違いないよ」
どれも変態そのものの能力だった。しかし確かにボディーガードには役立ちそうだった。それにどう見ても他に誰もいないので良晴も諦めるしかなかった。
それで彼はそのブリーフ一枚のボディーガードと共に空からヨハネスブルグに向かうことに
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