第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第71話 境界の大妖怪
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終えながらも、今度は勇美に目配せをしたのである。
そう、物言いたそうな勇美の事を察して依姫が気を利かせての行為なのだ。
「……」
その依姫の配慮を、勇美は受け止めなければならないだろう。そう思いながら彼女は口を開き始めるのだった。
「あの……紫さん?」
「何かしら?」
話の相手になる人が依姫から勇美に変わっても、紫は別段嫌そうな態度は見せなかったのである。寧ろ、この事は予想出来たかのように落ち着いている。
「紫さん、あなたは依姫さんと豊姫さんをヒーローたらしめて必要性を示させる為に第二次月面戦争を起こしたのですよね」
「ええ」
「それはつまり、囮として送った霊夢さん達にもヒーローたらしめる『怪人』のような役割を担わせたって事になるんですか?」
それが勇美が今までの話を聞いてたどり着いた結論であった。その言葉を紫は無言で受け止めていたが、やがて口を開いた。
「ええ、彼女達にはあなたの言う怪人、侵略者の役割を十二分に演じてもらいましたわ」
これも紫は事もなげにさらりと言ってのける。そんな彼女の態度からは、彼女の心の内を読み解く事は出来ない。
だが、自分の推測は正しかったようだ。だから勇美はここで言わなければならない事があるのだ。
「つまり、紫さんは霊夢さん達の事も、依姫さん達の事も利用した、そういう事なんですね?」
そう言い切った勇美。侵略者としてけしかけさせられた霊夢達の事も、それを打ち破る役割をさせられた依姫達の事も気遣っての発言であった。
その考えに至るのは、今まで勇美が過ごしてきた経験からであるのだ。依姫は新たな自分を確立する好機を与えてもらい、勇美を導く役割を担ってくれ、霊夢達幻想郷の住人達は弾幕ごっこで技と想いをぶつけ合って互いに笑い合うかけがいのない存在となってくれたのだ。
そう、勇美にとって、依姫達も霊夢達も大事な仲間となっていったのだった。
だから、そんな仲間達を利用した紫の事を咎めなくてはならないのだ。
勇美がそう想いを馳せている所を、依姫がやや失礼かと思いながらも口を挟んだ。
「勇美、私としては構わないわ。あの時魔理沙の提案で弾幕ごっこに発展していったのを、玉兎達の士気高揚に繋げる為に利用したのよ。だから、私にとってはお互い様という訳よ」
「いえ、依姫さん。この事は『私が』許せないんです」
「!」
その勇美の言葉に依姫は感銘を覚える程であったのだった。ここまで自分の意見として貫けるまでに成長したのか、そう思うと依姫は感慨深い心持ちとなるのである。
そんな勇美の心意気は受け止めなければ、いけないだろう。そう思い依姫は提案をする。
「弾幕ごっこは幻想郷でのいざこざを解決する為の手段に使われるのよね。なら勇美、この者と弾幕ごっこをしなさい。そこから解決の糸口が見つかるかも
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