第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第71話 境界の大妖怪
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でしょう?」
「ええ、かつて月であなたにお会いした時にあなたの能力を参考にさせて頂きましたわ」
依姫の質問に対して、しれっと重要な事を織り交ぜて返す紫。そう、二人は第一次月面戦争の時に対峙している関係なのであった。
言うなれば、霊夢に神降ろしを教えたのは、敵の能力を模写して流用するという手段と言えよう。
「それが依姫さんが一番知りたい事ではありませんわよね?」
そう飄々とした態度を取る紫に、依姫は今まで勇美が知り得ない程の神妙な雰囲気になりながら続ける。
「ええ、あの子に神降ろしを教えた。即ち、『大禍津見』の存在を教えたのもあなた……そういう事になるわね」
大禍津見……。あの時の事を依姫は忘れる事はないだろう。
霊夢は月人に寿命をもたらしてしまう、彼らにとって毒のような代物である『穢れ』を、この神の力を使って有ろう事か月でばら蒔いたのだ。
それは、普段は弾幕ごっこではほぼ無敵である霊夢が追い詰められるという今まで経験しなかった事に遭遇したが故にやった足掻きである。一番の責任は当然それを行った霊夢にあるのだ。
だが、その力をどこで知ったのか。それにより話は変わってくる。
そして、返ってきた返答は願わくば避けられていて欲しかったものであった。
「ええ、私があの子に教えましたわ」
実にあっさりと、紫は事の真相を明白にしたのだった。
「その方が、あなたのヒーロー性が引き立ったってものではありませんか? 月の崩壊の危機から救ったヒーローって感じで」
さらりとそんな事を平気でいう紫。それならば、依姫は言わなければいけないだろう。
「そのような事でヒーローになっても嬉しくはないわ。貴方は大変な事をしたのよ? あの時下手をすれば、私達も無事では済まなかっただろうし、あの子も殺めなければいけなくなったのよ」
このように互いの事に気を掛けた考え方は、中々出来ないだろう。大抵は自分達だけの事にしか頭が回らないか、その考えを隠す為に相手だけの事を思っている言い草をしたりと。
後者はよく耳にした人も多いのではなかろうか? 『お前の為を思って言っているんだよ』。本当に相手の事を考えているケースもない訳ではないが。
当然勇美の母親もその口なのである。だから、勇美はこの依姫の台詞に密かに感銘を受けているのだった。だからこの人は信用出来るのだと。
だが、この場の依姫は他の介入は無粋というものだ。だから、勇美はその想いは胸の内に閉まっておく事にした。
「よく心に留めておきますわ……」
そうゆったりと言う紫からは、彼女の想う所を察する事は出来ない。
依姫の言いたい事を分かってくれただろうか? それは分からないが、取り敢えず彼女は伝えたい事は伝え終わったようであった。
「私からは以上よ」
そう言って依姫は自分の話を
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