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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第71話 境界の大妖怪
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いてはご存知かと思われます」
「はい……」
 紫に言われて、勇美は素直に返事をした。全くを以て紫の主張に異論はなかったからだ。
 月人の地上差別思想の事は主に豊姫から聞いていた通りである事を勇美は知っていた。
 だから、勇美は紫が次に言う事の予想が漠然とだが出来るのだった。
「勇美さん、それなら話が早いわ。あなたも学校でする歴史の授業で粗方の事はご存知でしょう。そのような思想を持つ国家が一体どのような事をしてきたのかを……」
 そう紫に問いかけられながら重々しい空気を感じながら勇美は答えを紡ぎ出す。喉がカラカラになりそうな感覚だが、ここはそれを耐えて答えなければいけないだろう。
「……戦争ですね」
「その通りよ」
 勇美の答えに紫も頷く。
 第二次月面戦争とは違い、正真正銘の戦争
。それが正解なのだった。要因は物資不足、領土拡大等もあるが、その中の一つに差別思想が存在するのだ。
 それにより、謂わば正義の一環で他国へ進行して屈服させるという行為が、世界の歴史上幾度となく行われて来たのである。
 そして、紫は話を続ける。
「それで、戦争を起こすのは誰でしょうか?」
「……国の指導者ですね」
 それも勇美も分かる事であった。戦争を支持するのはリーダーが主体となって行われるのだ。そして兵隊はそれに従うしかなく、民はいつも犠牲になる立場なのである。
 そこまで言って勇美は合点がいった。指導者が戦争を斡旋しなければ戦争は食い止められる可能性があると。
「そこで依姫さんと豊姫さん、そういう事ですね」
 そう言いながら、勇美は側にいる依姫に目配せをした。当の依姫は無言で話の成り行きを見守っているようだ。
「そう、早い話が『他国のリーダーの存在は自分の国にも影響する』って事ですわ」
「……紫さんは地上を守る為に依姫さんと豊姫さんをリーダーであり続けさせる為に第二次月面戦争を起こした、そういう事ですね」
「その言い方は語弊がありますわ。私にはもう外の世界への興味は持てなくなっています。幻想郷さえ守られれば、そうとしか考えられなくなっていますわね」
「……」
 勇美は言葉に詰まった。冷たいと感じる一方で、正直な意見だとも思ったからだ。勇美にはこの答えに対する審判を下すのはやめておくべきだと感じるのだった。
 これで紫の話は見えてきただろう。だから、ここで言っておくべき事がある。今まで黙視を貫いてきた依姫であったが、意を決してここで口を開く事にしたのだった。
「紫……さんでしたよね、貴方には言っておかなければならない事があるわ」
「そういうあなたは依姫さん……ですわね。一体何かしら?」
 ここで両者腹を探り合うかのようなやり取りとなる。互いに油断してはいけない相手同士だからである。
「貴方があの子、霊夢に神降ろしを教えたの
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