第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第71話 境界の大妖怪
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「ようこそ私の空間にいらっしゃいました」
「!」
そう呼び掛けられた勇美は驚きながら、その人物の姿を目視する。
その者は見事な金髪をロングヘアーにしており、顔立ちは実に『端整』という言葉しか似合わない程の造型であった。
だが、彼女の瞳は紫色である為、その美しさは慈悲深さよりも妖艶さ、得体の知れなさを引き立てられている。
その頭には蝶のようにあしらわれた紐付きの白いナイトキャップが被せられていた。
極め付きはその服装だろうか。そこに一番目が行くというものだ。
それは、派手な紫色のワンピースであったのだった。正に彼女のイメージカラーであり……。
「あなたが、八雲……紫さんですか?」
そう勇美が問いかける通りの人物がそこにはいたのである。
「ええ、そうですわよ♪」
その大妖怪、八雲紫はそう飄々と答える。
やっぱり、勇美はそう認識した。そして、更に思う……この人はやはり『胡散臭い』なと。
勇美がそう思うのは、彼女の振る舞いや存在そのものからであった。何か、彼女は他人に掴み所を見出せないような言葉に言い表せないような独特の雰囲気があるのだ。
勇美がその理由を考えていると、紫の方から口を開くのだった。
「わざわざこのような場所までご足労頂いて光栄ですわ」
「……」
そう言われて勇美は無言となってしまう。やはりこの妖怪の真意というものが見えて来ないからである。
「あの、紫さん……?」
そんな雰囲気に、勇美は堪らずに彼女に聞き返してしまう。
「あ、これは失礼しました。折角の客人ともあろう方々に対して」
そう言いながら紫は愛用の扇で口を隠しながらころころと笑う。そのような得体の知れない振る舞いに耐えきれなくなった勇美はとうとうこう口にする。
「紫さん、今回のあなたの目的って……」
「折角出向いて頂いたのですから、少し私の話を聞いていってはくれませんか?」
勇美の真っ当となる筈の質問は、見事に紫の手、いや口によって遮られてしまった。
そういえばこの妖怪、人の話を余り聞かないって特性があったっけ……。そう勇美は思いながら諦めの境地に入るのであった。
「一体何の話ですか?」
「よく聞いてくれましたわ」
諦めの姿勢で聞く勇美に、紫はのほほんとした態度で言う。しかし、その瞬間些か空気に変化が現れた事を、今までの経験で培った勇美の感覚が察知していた。
「それでは失礼させて頂きますね。まず勇美さん、あなたはヒーロー番組って見ますか?」
「はえっ?」
勇美は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。それだけ紫が今放った言葉は突拍子もないものだったからに他ならない。
ちなみに、紫は勇美の育った環境に合わせてくれた物言いをしているようだ。でなければ幻想郷に馴染みのないヒーローものの娯楽の事を進んで話題
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