第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第70話 訪れる邂逅:後編
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
こから先恐れるものは余りないかも知れない。そう思うと勇美には胸の内に何か熱いものが込み上げてくる感覚となるのだった。
勇美がそんな事を思っているのを知ってか知らずか、依姫はこのような事を言い始めた。
「勇美、貴方はもう十分な実力を身に付けています。後は『勇気』を出すだけです。貴方の名前には『勇』の字があるだけあって、勇美は勇気のある子なのですから」
「あっ……」
依姫のその言葉を聞いて勇美は呆けてしまった。
勇美は母親にはいい思い出は少ないが、自分と同時に妹の楓を生んでくれた事に感謝しているのだ。
それに加えて、自分に名付けてくれた『勇美』という名前についてもであった。この名前は彼女自身も誇りに思っているのだ。
そして、勇美は今そうした自分の価値を再認識出来たのだ。当然その事を思い起こしてくれた依姫にも感謝をするのだった。
「では、行きますよ」
「はい、依姫さん」
そう言いあって二人は今いる異空間の探索を始めるのだった。
◇ ◇ ◇
そして、境界内の空間を二人は練り歩いていた。その中で二人は思っていた。
──やはり、この空間は物理法則がおかしいと。
まず今まで歩いて来た光の道が一定の所で後ろから、チョコレートのようにとろりと溶けてしまうのだった。
来た道を引き返す事は出来ないようだ。相手は此方を歓迎するようであるが、踵を返して逃げる事は許さないようかのようだ。
つまり、この空間から再び外へ出るには、この空間の主『八雲紫』その者と会わない限りは叶わないだろうという事であろう。
更に極め付きは、光の道に沿って進んでいると、まるでジェットコースターのように上下が逆転している事態に幾度となく遭遇するのだった。まるで美術作品の『シュレッダーの階段』のように空間がまともな物理法則の元には構成されてはいないのである。
これらの要素に勇美は呆気に取られるしかなかったのである。いくら幻想郷が外の世界の常識が通用しない所だっとはいえ、この空間はそれ以上に狂っていたのだ。
そのような事を思いながら、勇美は口を開いた。
「これが……八雲紫さんって事なんですね。掴み所のない、得体の知れない存在って事ですね」
身震いしながら勇美はそのように紫自身に対する感想を述べたのだった。
そんな勇美に対して、依姫は優しく彼女の肩を撫でる。
「確かに相手は、勇美が今まで戦って来た者達の中で一番脅威である事は間違いないでしょうね」
「……」
依姫にそうきっぱりと言われて、勇美は無言になるしかなかった。しかし、そんな勇美に対して依姫は付け加えた。
「ですが、私達が付いています。だから安心しなさい」
その心強い依姫の物言いに勇美は安堵を覚え、心地よい気分となる。
「それに、貴方にも神の力は付いているのですか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ