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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第69話 訪れる邂逅:前編
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「それでは行きましょう」
 依姫のその言葉に追従するように、この場の者全員が頷いた。そして皆一様に緊張に包まれていた。
 そして、一同は意を決して永遠亭を後にし、直ぐ様に豊姫の能力で月へと向かったのだった。
 そう無駄のない直球な行動に移るのには真っ当な理由があったのだ。
 ──他でもない、玉兎達から受け取ったメッセージが、『八雲紫の物とおぼしき境界を見付けた』というものだったからだ。
 勿論依姫と豊姫はイシンを通して、玉兎達にそれ以上境界に近付かずに現状維持するように指示をしておいた。
 相手は大妖怪なのだ。いくら綿月姉妹がそれ以上の力を有しているとはいえ、それも多大な力を持っている事に変わりはないからである。
 ましてや神出鬼没の妖怪である。何をしでかすかは綿月姉妹でさえも読む事は不可能というものなのだ。
 だから、玉兎達の安全を考慮する意味でも現状維持を指示しておいたという事である。
 その意味でも急がねばなるまい。玉兎達に思わぬ危害が降り注ぐ前に彼女達の元へと向かうのだ。
 そして、やはり豊姫の能力にまどろっこしい前置きなど存在してはいなかった。すぐに勇美達を連れて月の地に立ったのだ。
 やはり目の前の景色が瞬時に変わるのはおかしな気分となってくると勇美は思う。しかし、今はそのような事を気にしている場合ではないだろう。
「それじゃあ行こうか」
 その豊姫の合図の下、一行は目的の場所へと向かうのだった。

◇ ◇ ◇

 その場所はすぐに見付かった。何せ相手は大妖怪なのだ。それ相応の妖力を放っているというものだ。
 そして、その場所には二羽の玉兎がいた。先程勇美が戦った、ロールとニースの二羽である。
「待たせました。貴方達に怪我とかはない?」
 そう言って依姫はまずは二羽の安否を気遣う。部下の事を真っ先に気遣う辺り、さすが依姫といった所か。
「はい、私達は大丈夫ですよ」
 それに対してロールは答える。傷のようなものは一切負ってはおらず、全くを以て無事なようである。
 その事にまずは胸を撫で下ろす依姫。まずは部下の無事な所を確認出来て安泰なようだ。
 だが、当然それだけで終わらせてはいけないのだ。そう思いながら依姫は次なる確認をする。
「それで、『境界』はどうなっていますか?」
「あれです!」
 依姫に聞かれてロールは彼女のすぐ先にある物を指差した。
「あれが……」
 それを見た瞬間、勇美は思わずごくりと唾を飲んでしまった。
 それは初めて見る彼女にとっては無理のない事だろう。何せ、生まれてから長い間外界で暮らしてきた彼女にとっては常軌を逸した光景だったからだ。
 空間の何もない所から裂け目のようなものが生じて、ぽつんと宙に浮かんでいるのだから。そして、その中が赤や紫色ので、かつ所々に不気味な
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