第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第69話 訪れる邂逅:前編
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らう理由はないというものであった。
「話は済みましたか? それではまずは私から行きますよ」
そう話を切り出したのは依姫であった。未踏の地へと足を踏み入れるには、まずは自分が率先して行くべきという考えからである。
そして、自分が先に入ってもその後で勇美が逃げ出したりはしないだろうという信頼の表れでもあったのだ。
確かに勇美はせこい手を使って勝利したりと、やや姑息な所がある。だが、一度決めた事はやり遂げるのを依姫は一番知っているのだ。
そして、姑息な所も依姫は責める気はないのである。それは勇美自身の意志で決めた事だからだ。
勇美は自分を良く見ていたのだ。だから、依姫のように正々堂々では彼女の下に近付く事は出来ないと分かっていたのである。
だから勇美は自分のやり方を見出だしていったのだ。それが彼女が何が何でも勝とうと目指す、『悪』の一関となっているのだった。
そして、依姫は勇美にそのような信頼をしつつ、境界の目の前に立った。
続いてその身を境界の中へと送り込んだのだ。それは迷う事なく思いきり。
すっぽりと境界の中へと入った依姫は、そこから外へ向かって声を上げた。
「大丈夫なようですよ。だから勇美も此方へ来なさい」
それを聞いて勇美はごくりと唾を飲んだのだ。これでいよいよ自分の番だと。
よしっ、と勇美は一息入れて覚悟を決めた。後は未踏の地へと足を踏み入れるだけである。
その前に勇美は依姫に一声描ける。
「依姫さん、踏ん切りをつける為に……パンツ脱いでいいですか?」
「駄目」
依姫の間髪入れない対応であった。最早条件反射の域に達しているだろう。
「勇美さん……」
そして勇美はこの場にいる者全てから冷たい視線を浴びる事となるのだった。その中に豊姫も含まれていたのだから辛いものである。
ともあれ、勇美は気を取り直して境界に向き直る。
──やはり緊張する。そしてパンツを脱げなかった事も密かに悔やんだ。ノーパンなら色々な事に立ち向かえそうだと勇美は本気で思ったりしていたのである。
まあそれは破廉恥極まりない行為だから、出来なくて当然かと勇美は思い直す。
「では、行きますね!」
「勇美さん、頑張って下さいね!」
意を決して宣言する勇美に、玉兎達は声援を送る。そして不謹慎ながら『やっぱり自分達じゃなくて良かった』などとも思ったりもしていたのだった。
そんな玉兎の半分の本心は当然知らずに、勇美は声援に背中を押されるように前へと進んだのだった。
そして、恐る恐るまずは自分の右手を境界の中へと差し入れたのだ。
不思議な感覚であった。周りは変哲のない空間なのに、そこに手を入れると別の空気に触れるような感覚に陥るからである。
はっきり言って怖い。だが、この先には依姫が待っているのだ。その心
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