第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第69話 訪れる邂逅:前編
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目玉のようなものが漂っているのだ。さながらホラー映画に出てくるような光景である。
「あれが『スキマ』なんですね……?」
「スキマ……?」
勇美がそう呟いた瞬間、この場にいる者全てが首を傾げたのだった。
「あれっ?」
その状況に今度は勇美が首を傾げる番であった。自分は何か変な事を言っただろうか?
「あの? 何か私おかしな事でも言いましたか?」
「あ、ごめんなさいね」
訝る勇美にふと気付き、依姫は至らぬ事をしたと素直に謝るのだった。
「『スキマ』って言葉が聞き慣れないものでしたからね」
「あれ、知らなかったんですか……あっ」
依姫に言われて呟いた時、勇美ははっと気が付いた。
そもそもここに住んでいるのは月の住人。だから地上である幻想郷の事について知らない内容があっても、至極当然というものだろう。
「あ、私の方こそすみませんでした。あなた達が知らなくてもおかしくない事を知ってると思ってて」
そう言って勇美はぺこりと自分以外の、全て月の住人である彼女達に頭を下げるのだった。
そんな素直な振る舞いをする勇美に、豊姫は彼女の頭を撫でた。やっぱり何か可愛らしいこの子と思いながら。
「勇美ちゃん、あなたが気落ちする事はないわ。だって私達の知らない事を教えてくれたんですもの♪」
「豊姫さん……はい!」
撫でられながらそのような事を言われて、勇美はこそばゆい心地よさを感じながら、歯切れの良い返事をするのだった。
そして、豊姫達も思った。自分達は地上について知らない事がまだまだ沢山あるなと。
だから、これからも幻想郷、そして勇美とももっと関わっていきたいと切に願うのであった。
「それで、これからどうするか、ですけど……?」
ここで勇美はさっきの歯切れの良さが嘘のようにまごついた様子を見せながら呟いていた。ここまでくると選択肢は限られてくるが、願わくば自分の予想するものとは違う事を期待していたのだ。
だが、現実は非情だったようだ。依姫の次の台詞で運命は決まるのだった。
「決まっているわ、この中に入って境界の妖怪の元へと向かうのよ」
「ですよね〜」
最早、勇美はそのように気の抜けた返事をするしかなかった。
だが、依姫はここで思いがけない事を言い始めた。
「ですが、ここは慎重に事を進めるべきです。万が一の為に全員でこの中に入るのは避けるべきでしょう」
その依姫の提案に勇美はおやっ? と思った。てっきり彼女は全員で向かうものと思っていたのだから。
「まず、汎用性のある能力のお姉様は外で待機していて下さい」
「了解♪」
妹の作戦に豊姫は快く承諾するのだった。そして、今の依姫に感心もするのだった。
かつて侵略者の騒動の時、依姫はそつなく行動を起こしながらも姉の事を憂うという迷いを見せ、そこを豊
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