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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第68話 イシンの能力
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はバックブリーカーなんて荒技は出来ません。
 そして、一頻りイシンに技を掛けて勇美は落ち着いたようだ。
「イシンさん、その、ごめんなさい。悪ノリしました……」
 しゅんとなって縮こまる勇美。これまたやはり小動物的である。
 そんな和む振る舞いをされてはイシンも毒気を抜かれてしまうというものだ。
「勇美さん、まあそう言わないで下さい。『隣の家の花は赤い』って言うように他人のものって立派に見えてしまうものですから。
 それに私自身この能力は分不相応だと思うんですから……」
 そう言ってイシンは考え込んでしまった。大それた能力故に本人も困惑しているようだ。それもつい最近まで無名の玉兎兵士をやっていた者なのだ、地に足が着かない感覚に陥ってしまうのも無理はないだろう。
「そっかぁ……イシンさんも悩んでるんだよね」
 そう言って勇美はしみじみと頷いた。
 それを聞いてイシンはおやっと思い、聞いた。
「勇美さんも悩んでいるんですか?」
「ううん、私の場合正確には『悩んでいた』かな?」
「悩んでいた、ですか?」
 その言葉にもどういう事だろうと思い、イシンは聞き返すのだった。
 その疑問に勇美は答えていく。
「そう。私の能力は自分で動力源を用意出来ないからね。それで依姫さんと出会うまではそれはもうね……」
 そう呟きながら勇美は感慨深く思う。あの出会いがなければ今の自分は存在しなかったのだと。
 そして、勇美は話を続けた。
「同じ悩んでいたっていっても、イシンさんとは逆の方面だったって事になるかな〜?」
「……」
 それをイシンは無言で聞きながら思った。勇美さんは今の自分よりももっと苦心していたのだろうと。
 だから、自分の悩みは贅沢な話になってくると自分に言い聞かせようとする。そこへ、イシンのそんな心境を知ってか知らずか勇美は声を掛けてきてこんな事を言い始めたのだ。
「でもね、依姫さんと出会って切っ掛けを手に入れてからは悩む事は余りなくなったかな?」
 それからの自分は実に充実していたと勇美は言ってのけたのだ。そこから先は夢中になって悩む時間も惜しくなったとも。
「だから、イシンさんもこれから夢中になれる事を経験していけるといいですね♪」
「勇美さん……」
 勇美にさりげなく応援の言葉を受けてイシンはこそばゆくも心地よい気持ちとなるのだった。そして密かに、今の言葉を自分の能力に深く記録したのである。──これから苦難に遭った時は勇美の今の言葉を能力で引っ張り出して、励みにしようと。
 そしてイシンは今後の事に思いを馳せてこう強く言うのだった。
「依姫様、豊姫様。今までありがとうございました。このご恩は決して忘れません」
 こういう状況では月並みな言葉になってしまうだろう。だが、これはイシンの心からの混じり気のない言
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