第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第65話 歯車の策士:前編
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くしながら勇美は、これまたいつも通りにスペル名を宣言した。
「それでは行きますよ。【星弾「プレアデスブレット」】!」
それと共に勇美は引き金をキリリと引く。そして、銃口から星々の弾が次々と放出されたのだ。
まずは眼鏡の子から攻めようと勇美は踏んでいた。相手が三羽でも、一羽ずつ堅実に対処していけば道は開けると思っての事である。
そして、星の群れは狙い通りに眼鏡の玉兎へと肉薄していったのだ。「よしっ!」と勇美は心の中で歓声をあげた。
だが、ここで場の空気の流れが変わる事となる。
「ロールさん、来ます!」
そう叫んだのはレイセンであった。彼女が『ロール』と呼んだのはこの眼鏡の玉兎のようである。
「はい!」
レイセンの呼び掛けに応え、『ロール』は構え、手にした銃剣を星々の群れへと向けたのだ。
そして、勇美にとって驚くべき事が起こるのだった。
「【転符「ルナバレルロール」】!」
そう、ロールもスペルカードを使ったのであった。そして、彼女の銃剣から勢い良く無数の弾丸が放出されたのだ。
そして、それは勇美の放った星々へと飛び込んでいき、次々と相殺していった。それによりパチンパチンと小気味良い音が鳴り響いた。
こうして勇美の放った星の群れは、儚い泡のように綺麗さっぱり消滅してしまったのだった。
この事態に呆気に取られてしまう勇美。無言になっている彼女からは心情が読み知れない。
ショックだったのだろうか? 自分の攻撃を防がれたばかりか、まさか玉兎にスペルカードを使われるとは思っていなかっただろうから。
スペルカード。それは勇美に取って特別なものであったのだ。依姫と出会うまでは、いくら渇望しても自分とは無縁の存在だったのだ。
それが依姫と出会った事を切っ掛けに自分もスペルカードを作れるようになったのだ。故に、勇美はそれに人一倍思い入れがあるのだった。
だから、一介の玉兎があっさりとスペルカードを使う所を目の当たりにしては、その精神的衝撃は強いのではなかろうか。
そう思われる中、勇美は口を開いたのだ。
「ロールさん……でしたっけ? あなたもスペルカードを使えるんですね?」
言う勇美の表情は実に晴れ晴れとしていて快活な振る舞いなのであった。そんな勇美にやや気押されるようにロールは言う。
「え、ええ。少しだけですけどね」
そうロールは遠慮気味に言うのであった。
その言葉に謙遜の意味合いはなかったのだ。本当に最近になって少し使えるようになっていったからだ。
そこまで聞いても、勇美のうきうきした様子は変わらなかった。
「でも、素晴らしいですよ」
そう勇美はロールに労いの言葉を掛けるのだった。
一方で、そんな勇美の心境が理解出来ないのはロールである。その理由は彼女自身の口から紡がれた。
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