第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第64話 噂のあの子との邂逅
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てしまったのである。
第一に新しいものの存在を受け入れる事だ。寿命による死の概念が無くなった為に次の世代を生み出す発展に必要な土台が育ちにくくなってしまったのである。
それだけなら月人だけの問題である。しかし、次の問題はそうはいかないのだ。
第二の問題は排他的思想である。死との関わりが薄れた自分達を偉大、そしてそれと関わり続けている地上の生き物達は下等という選民意識だ。
そのような思想は地上でも問題になっている。他国への圧力、そして戦争などはこの事が温床である事が多いのだ。
故にそのような思想が強い月は、いつ地上に戦争を仕掛けてもおかしくないのである。
それが今辛うじて安泰を保っているのは綿月姉妹という、地上でいう所の『鳩派』がリーダーを務めているからに他ならないのだ。
彼女達がリーダーでいなければ戦争が起きかねない。だから、ずっとその地位に留まっていなければならないのだ。──二人とも本当は他になりたい役職があるのに。
だから勇美は思うのだ。自分が生きている内には無理である可能性が高い。それでも生きている間に豊姫と依姫がなりたいものになれる手助けを何か出来るのならしたい……と。
故に今勇美は自分のやるべき事──この月で八雲紫を見付け出す事に専念しようと心に決めるのであった。
「それじゃあ豊姫さん、依姫さん。紫さんを一緒に探しましょう」
その決意を胸に勇美は言った……その時だった。
「えい、やあっ!」
「はあっ!」
何やら、どこか威勢の良い掛け声が聞こえてきたのだ。一言で表すと『意欲的』な口調の掛け声が。
「この声は……?」
勇美は何事かと思い、首を傾げる。対して綿月姉妹は合点がいったようで、すっきりとした表情をしている。──特に依姫に関してはどこか誇らしげですらある。
「勇美ちゃんは初めてだから、分からないのも無理ないかぁ♪」
「そうね」
どこか楽しげに話す二人に対して、勇美はますますおいてけぼりを食ってしまう。
「二人とも〜、どういう事ですかぁ〜」
そんな二人に、勇美は抗議するようにすがるしかなかった。
「まあ、焦らすのは可哀想だし。依姫、正解を見せてあげたらどう?」
「ええ、減るものでもないから構わないわね」
そう意味ありげな会話を綿月姉妹はしていた。
「一体何なんですか?」
「それは行けば分かるわよ」
そう言って依姫は茶目っ気を出して見せるのだった。いつになく楽しそうである。
そして勇美は二人に案内されるのだった。
◇ ◇ ◇
三人が向かった先には、これまた三人の人影が存在していたのだ。
「やっていますね」
依姫はその三人の目の前に現れてから開口一番にそう言った。
彼女の目の前にはひた向きに戦いの訓練に励む玉兎達の姿があったのだった。
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