第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第63話 月に出て行くか:後編
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「どうしたのですか八意先生?」
再度勇美は永琳に確認した。自分が呼ばれたのは聞き間違いではなかったかと確認する為である。
だが、それは思い違いであったと勇美は思い知らされる事となる。
「勇美ちゃん、呼び止めてごめんね? でもあなたには言っておきたい事があるのよ」
「それは何ですか?」
要点を得ない勇美は永琳に聞き返した。一体何事だろうかと。
その疑問に、永琳は丁寧な口調で答えていくのであった。
「勇美ちゃん、あなたには豊姫と依姫と一緒に月へ行って八雲紫の足取りを追って欲しいのよ」
永琳が言い切ると暫し静寂が辺りを包んだ。そして、当然のようにそれは破られるのだ。
「わ、私がですかぁ〜!」
ある意味台本通りのような反応をしてしまったと勇美は思った。だが、それでもこういう反応をするしかなかったのである。
「ええ、勇美ちゃんに頼みたい事なのよ」
さらりと、しかし慈愛に満ちた口調と表情で永琳はそう勇美に告げた。
そして永琳は続ける。
「勿論無理強いはしないわ。私達は勇美ちゃんの意思を尊重したいからね」
意思の尊重……その言葉は慎重に見極めなければいけないだろう。何故なら支配型で他人を自分の思い通りに操ろうとする人間程、外面を良くしようと建前でその言葉を使うからである。──勇美の母親にも当然のようにその傾向があるのだった。
だが、勇美はこの時感じた。──この人は断じて母親のような取り繕いから言っているのではないと。
自分の帰る場所となっている永遠亭や、第二の故郷となりつつある幻想郷の力に少しでもないたいと切望する勇美の心境を察しての事だと彼女は感じ取っていた。
だから、勇美の答えは決まっていた。
「はい、その任務、私にも手伝わせて下さい」
「勇美ちゃんならそう言ってくれると思っていたわ」
固い決意の現れをその瞳に宿して言い切った勇美に、永琳は憑き物の落ちたような雰囲気を醸し出しながら言った。
「やっぱり、ですか?」
永琳に言われて、勇美は首を傾げてしまった。
「ええ、豊姫と依姫は私の元弟子、そしてその二人に着いて行ったのが勇美ちゃんだからよ。
つまり、勇美ちゃんには間接的にだけど私の想いが伝わっているのだと私は考えていたけど、その事が今分かったわね」
「何か、いいですね、想いが繋がっていくのって……」
永琳の考えに賛同しながら勇美は思い出していた。最初に依姫が勇美にコンタクトを取ったのは、自分が姉や師に恵まれたから、今度は自分を必要としている者に応える番、それが勇美だったという事を。
あの切っ掛けがなければ、今の自分は存在しないだろうと勇美は痛感するのだった。そして、今の自分を導き出してくれた全ての者に勇美は感謝の意を示す。
「八意先生、豊姫さん、依姫さん。ありがとうございまし
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