第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第62話 月に出ていくか:前編
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依姫とフォルの接戦が繰り広げられた後のその帰路で、勇美はふと依姫に話掛け始める。
「あの……依姫さん……」
些か歯切れが悪い。話掛けたものの、切り出して良い事なのか躊躇いがあるようである。
その勇美の振る舞いを汲んで、依姫は続きを促す。
「どうしたの? 言いたい事は迷わずに言いなさい」
「はい、それでは……」
依姫に促されて、勇美は意を決して言葉を切り出す。
「依姫さんはフォル様との戦いの時、私を巻き込まないように気を回してくれたのですよね?」
そう、勇美はその事を察していたのだ。もしかしたら自分がいなければ依姫はフォルに勝てていたのかも知れないと。
それを指摘された依姫だが、彼女は落ち着いていた。──次に勇美がどう出るのかを見届ける為に。
「私の為に……有り難うございました」
その勇美の口から出て来た言葉は、お礼のものであったのだった。
それを聞いて依姫は安堵と感心を覚えた。
こういう場合、『私のせいで』と言いたくなりがちであり、そう逃げ場を作るのは容易い事であろう。
だが、それを勇美はせずにお礼という形を取ったのだった。その勇美の心の強さを依姫は微笑ましく感じ、気付けば勇美の頭を撫でていたのだった。
「あっ……」
勇美は、依姫から彼女らしからぬ行為を受けて、驚きを感じた。
だが、悪い気はしなかったのだ。寧ろ心地好くてこそばゆいのであった。
そうしながら依姫は口を開く。
「私も精進しないといけないわね。それを言い訳にしないで勝てるようにね。──他でもない、勇美のためだから……」
言って依姫は儚げながらも心強い笑みをたたえて勇美を見据えるのだった。
(うん、あの二人。ますますいい感じの関係になってるウサね♪)
そんな絆がより強まった二人を温かい目で見ながら、『彼女』は後を追い掛けていったのである。
◇ ◇ ◇
二人が貴重な体験をしてから暫くの事であった。何やら永遠亭の中が騒がしくなっていた。
休憩を取っていた勇美は、近くを通り掛かった鈴仙に何事かと事情を聞いた。
「鈴仙さん、一体何があったのですか?」
「あ、勇美さん」
勇美に呼び止められて、鈴仙は暫し思案した。──『この事』は勇美にも伝えるべきかどうかを。
鈴仙がどうしようか考えあぐねているのに、後ろから来た永琳は気付いたようである。そして、彼女にこう促すのだった。
「ウドンゲ、いいわ。勇美ちゃんにも話してあげましょう」
「師匠……」
自らの師に促されるも、鈴仙にはまだ躊躇いがあった。──この子を巻き込んでいいのかと。
「ウドンゲ、構わないわ。勇美が力に成りうる事、あなたにも分かるでしょう」
勇美の今までの活躍は、永琳の知る所でもあったのだ。だから彼女は勇美なら心配いらないと鈴仙に勧めたので
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