第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第62話 月に出ていくか:前編
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ある。
「……」
永琳に言いくるめられて、尚思案する鈴仙であったが。
「分かりました」
そう言って彼女は思い腰を上げたのだった。
それは、彼女もまた勇美の色々な強さを思い出したからであった。
「それじゃあ、勇美ちゃんも会議室に来てね」
言って永琳は勇美を案内するのだった。
◇ ◇ ◇
勇美が通されたのは、永遠亭の会議室であった。
会議室とは言っても、学校の職員室、病院の中、職場のような独特の『重苦しさ』を持った場所とは無縁であった。
寧ろシックな木の壁やお洒落なランプがあしらわれていて、喫茶店のような癒しの空間がそこにはあったのである。
それは永琳のこだわりによるものであった。どうしても物々しくなる会議の場を、少しでも和らげられないかという試みなのである。
その事も、彼女が勇美をここに通した理由であった。ここなら子供である勇美にも精神的苦痛は少なくなるだろうと。
「素敵なお部屋ですね〜」
この勇美の言葉により、その試みが功を奏している事が証明されたようであった。
「ありがとう、勇美ちゃん。じゃあ勇美ちゃんはここに座ってね」
「はい……えっ?」
永琳に席を勧められて、いざ座れると安堵しかけた次の瞬間、勇美はこの空間の異常性に気付いたのである。
それは、この場にいる面々であった。
永遠亭のナンバー2である永琳、豊姫と依姫の綿月姉妹、そして鈴仙。ちなみに輝夜の姿はなかった。
「輝夜様参加しましょうよ〜!」
「まあニートだからね」
心の叫びを上げる勇美に、依姫はしれっと失礼な指摘を付け加えたのだ。永琳には聞こえないように、あくまでこっそりと。
それは問題ではなかった。組織のトップが会議に参加しないのはまた別の問題ではあったが。
その『問題』の名前を勇美は口にする。
「八雲……藍……さん?」
その名前こそが勇美が認識した存在の名前だったのである。
八雲藍……。その者は現在行方が知れていない存在、境界の妖怪『八雲紫』の従者なのである。
妖怪の従者であるが故か、彼女もまた妖怪なのであった。その事は彼女の後ろに生えた見事な九つの狐の尻尾が物語っているだろう。
そんな彼女を見て、勇美は迷わずに思った事を言った。
「藍さん、その尻尾をもふもふさせて下さい」
「断る」
相手は即答であった。勇美のような要望をあげる者の扱いには慣れているのだろう。
勇美は「ぇー」と気のない返事をしつつも、気を取り直して本題に入った。
「何で、藍さんがこの場にいるのですか?」
それが一番話題にすべき事であろう。藍はその勇美の疑問に答えるべく話を進めていく。
「お前は勇美だったかな?」
「はい」
勇美は素直に答える。藍の口調は男勝りでやや無骨であるが、その話し方から彼女が
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