疾走編
第三十三話 帰途
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な」
急かされる様に席を立ったリンツとブルームハルトはブリッジへ暇潰しに、デア・デッケンとクリューネカーは部屋に戻るようだ。
「そうですね。何もしなくてもこの時間には腹が減ってしまいますね」
食堂と言っても専門の調理員がいる訳じゃない、冷凍のディナーセットをチン!するだけだ。俺は植物性蛋白のカツレツセット、マイクは…冷凍品じゃなくて、ビッグサイズのインスタントヌードルにするようだ。
「おいおい、ヌードルはワインに合わないだろう」
そう言いながらシェーンコップは俺達の分の紙コップを取ると、それにワインを注ぎ出した。
「終わったな。まあ、連隊に戻るまでが任務だが」
「そうですね」
「どうしたんだ」
マイクの元気がない事に気付いたのだろう、シェーンコップがチーズを食べながらマイクに尋ねた。
…あんた、酒とツマミたくさん買い込んで来たな?実は俺もなんだ、後で持ってこよう…マイクの話は俺が聞こうと思っていたけど、ここはメシに専念させてもらうとするか。
「少佐はなんで亡命したんですか?」
「急だな。…俺に聞くな、その時俺はまだご幼少のみぎり、だ。俺には理由などないよ」
「あ、そうでしたね。お祖父さんとお祖母さんでしたよね?少佐はお二人に理由は聞かれたんですか」
「聞いてないな、今となっては聞けないし、もうどうでもいい事だ」
「お二人とも亡くなられてるんですよね…そうですよね」
「一体どうしたんだ?」
お湯を注いでとっくに三分経ったインスタントヌードルに、マイクはまだ手をつけていない。再び紙コップにワインが注がれた。
「俺達と一緒でしたね、帝国の人間も」
「当たり前だろう」
「いえ、そうじゃなくて…何と言えばいいのか、確かにアイゼンヘルツは不景気そうな所でした。俺、帝国の人間を見るのは初めてだったんですよ」
「過去の戦闘でも見てるだろう?」
「あれは帝国軍人です。俺達と変わりませんよ」
「帝国に住んでいる人間、帝国の風景を初めて見た、という事か」
「そうです。不景気そうっていうだけで、同盟とさほど変わりはない。それに気付いたら、なんで戦ってるんだろうってふと考えちゃったんですよ」
マイクの紙コップに三杯目を注ごうとしたシェーンコップの手が止まった。つい俺も手を止めてしまった。
「俺の親父も戦死でした。だから、親父を殺した帝国軍は確かに憎い。でもここの人達は…って思っちゃって。ダメなんですかね、こういうの」
「駄目じゃないさ」
マイクの三杯目になる筈だった分は、違う紙コップに注がれていた。…部屋から新しいボトル持って来るか。今夜は長くなりそうだ。
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