第四章
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「杉浦が出ても皆川が出てもな」
「他のピッチャーなら打てます」
「正直スタンカが昨日みたいな気迫で出るとどうにもなりませんが」
「他のピッチャーなら打てます」
「安心して下さい」
「頼むで、そしてうちの先発は」
村山の四角い顔を見て言った。
「お前や」
「わかりました」
村山は藤本に確かな声で答えた。
「やらせてもらいます」
「今日うちは日本一になる」
藤本はここでも確信を以て言い切った。
「この甲子園でな」
「そうですね、ここで」
「うちの本拠地で」
「そうなりますね」
「そや、勝つで」
こう言ってグラウンドに出た、だが。
一塁ベンチでだ、藤本も阪神ナインも驚愕した。何とマウンドに。
スタンカがいた、藤本はそのスタンカそして三塁ベンチにいる鶴岡を驚愕の顔で見た。スタンカは鬼の顔でマウンドに立っており。
鶴岡は腕を組み会心の笑みで藤本を見返している、藤本はその二人と威風堂々としている南海ナインも見て杉下に言った。
甲子園のボードにもスタンカの名前がある、そのことも確認して言った。
「やられた」
「はい、まさかです」
杉下も驚愕の顔で応える。
「今日もスタンカに投げさせるとは」
「そうしてくるとはな」
「ないと思っていました」
絶対にというのだ。
「ほんまに」
「わしもや、これは」
藤本は自分が率いる選手達を見た、見れば。
誰もが唖然となっている、完全にスタンカに飲み込まれていた。マウンドにいる彼に試合がはじまる前からそうなっていた。
その彼等を見てだ、苦い顔で言った。
「あかんか」
「試合はまだですが」
「スタンカの顔は鬼のもんや」
赤鬼の通称そのままにだ。
「これではな」
「あかんかも知れんですね」
杉下もこう言った、そして実際にだった。
阪神打線はスタンカを打てなかった、彼の力投の前に手も足も出ず。
完封された、藤本は鶴岡の胴上げを見つつ杉下に語った。
「スタンカで三勝や」
「はい、このシリーズは」
「特にな」
「昨日と今日ですね」
「二日連続でやられたわ」
「どちらも完封で」
「昨日でないと思った」
その完封でというのだ。
「ほんまにな」
「全くです、恐ろしい男です」
スタンカはとだ、杉下もこう言うしかなかった。
「二日連続で完封とは」
「化けものや、もう褒めるしかないわ」
スタンカ、彼をというのだ。
「敵ながら見事や、そしてな」
「そして、ですか」
「このことは野球の歴史に残る」
日本のそれにというのだ。
「それだけのことや」
「ですね、これは」
「そや、二日連続の完封とな」
それと共にというのだ。
「それで南海を日本一にさせたことはな」
「日本の野球の歴史に永遠に残りますね
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