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二日連続
第三章
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「勿論勝てばええば」
「若し負けても」
「最後の試合スタンカは投げられん」
「今の杉浦と皆川ならですね」
「何とか勝てる、それでや」
「悪くても第七戦で、うちの勝ちです」
「うちが日本一や、やっぱりエースが一人やとな」
 それならというのだ。
「二人のチームには不利や」
「はい、阪神はです」
「勝てる、わしの読み通りにな」
 まさにとだ、藤本は笑っていなかったが自信に満ちた声で言った。そして。
 甲子園での第六戦では読み通りスタンカは先発であり彼は決死の覚悟で投げた、その力投の前に阪神打線は手も足も出ず。 
 完封となった、だが。
 杉下は試合の後で藤本に言った。
「バッキーで負けましたが」
「それでもな」
「はい、スタンカは今日投げました」
「力投やったな」
「完封でした」 
 つまり阪神は手も足も出なかったというのだ。
「それで互角に持ち込まれましたが」
「スタンカは使った」
「そうです、ですから明日は」
 そのスタンカはというのだ。
「投げられません」
「スタンカ以外は何とか打てる」
 阪神の打線でもというのだ。
「そしてこっちはな」
「村山を出します」
「あいつをな」
 阪神にとって絶対のエースである彼をというのだ。
「村山は全力で投げてくれる」
「あいつはやってくれます」
 間違いなくとだ、杉下は太鼓判を押した。村山の勝負に燃えかつ何があろうとも全力を尽くす性格を知っているからこそ。
「南海打線を抑えてくれます」
「野村も他の奴もな」
 野村克也、南海のキャッチャーであり主砲である彼もというのだ。
「そうしてくれます」
「その通りやな」
「ですから明日は」
「うちが勝つ」
「甲子園で胴上げです」
 本拠地でというのだ。
「そうしましょう」
「ああ、絶対にな」
 藤本は勝利を確信し杉下に応えた、だが。
 この時スタンカは鶴岡に直訴していた、その直訴の内容はというと。
「ボス、明日も俺が投げる」
「そうしてくれるか」
「ああ、俺以外にはいないな」
「正直なところな」
 鶴岡はその目を鋭くさせてスタンカに答えた。
「お前しかおらん」
「そうだな」
「スギも皆川も本調子やない」
 それでというのだ。
「お前しかおらん」
「だから明日も投げる」
「今日完封したけどやな」
「明日も投げる、阪神打線は俺が抑える」
 絶対にという口調での言葉だった。
「だからだ」
「明日もやな」
「任せてくれ」
「よし、そうさせてもらうで」 
 鶴岡はスタンカの言葉に頷いた、これで南海の作戦は決まった。そして翌日。
 藤本は甲子園に入るとすぐに選手達に言った。
「スタンカは昨日投げた、完封されたが」
「昨日投げたからですね」
「完封したから」
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