第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
二日連続
昭和三十九年の日本シリーズはかなり独特なものであった。
南海ホークスと阪神タイガースの関西の球団同士のカードだった、それでだ。
大阪の御堂筋、どちらも在阪球団でありこの道と縁がある特に南海は本拠地である大阪球場に行く道であるので御堂筋決戦と呼ばれていた。東京オリンピックの年のシリーズであることも特徴であった。
その対決前に阪神は何とか優勝を決めた、だが。
阪神の監督である藤本定義は自信を持って何とリーグ優勝を決めた次の日からのシリーズについてこう言った。
「うちが勝つ」
「南海に勝てますか」
「絶対にですか」
「そう出来ますか」
「こっちには村山とバッキーがおってな」
周りにまずは二人のエースの名前を出した。
「そしてバーンサイドもおる」
「投手陣は充実している」
「だからですか」
「南海に勝てますか」
「それに対して向こうはスタンカがおって」
そしてというのだ。
「杉浦と皆川もおるが」
「それでもですか」
「阪神有利ですか」
「そうですか」
「村山とバッキーはそう簡単に打てん」
阪神が誇る二人のエースはというのだ。
「この二人でそれぞれ二勝や、うちの打線でも皆川は何とか出来てや」
「阪神の打線は弱いですが」
「それでもだっていいますか」
「そや、杉浦も一回肩を壊してや」
その結果というのだ。
「前程やない、怖いのはスタンカだけや」
「ほなですか」
「スタンカさえ抑えれば」
「こっちは問題なしですか」
「そや、あっちは実際スタンカだけでや」
絶対に信頼出来るピッチャーはというのだ。
「こっちは村山とバッキー、勝てるわ」
「ほな今日からのシリーズはですね」
「阪神が勝つ」
「そうなりますか」
「絶対にな、二年前は東映に負けたが」
それでもというのだ、東映の監督はかつて巨人の監督であった水原茂でありかつて巨人の監督を務めていた藤本とは顔馴染みでもあり何かと因縁の相手でもあった。
「しかしや」
「今度はですね」
「南海に勝って」
「そうして日本一ですね」
「そうなる、今日からそれがはじまるわ」
その皺が目立つ如何にも古狸といった顔で言う、そしてだった。
藤本は南海とのシリーズに向かった、対する南海の監督である鶴岡一人は藤本の言う通りに悩んでいた。
彼はスタンカ、大柄の彼にこう言っていた。
「お前一人には任せんからな」
「それでもボス」
「いざという時はか」
「俺がいるから」
スタンカは自分から言った。
「任せてくれ」
「いいんか?」
「俺は南海のピッチャーだ」
だからだというのだ。
「南海の為に投げる」
「いいんか、それでも」
「ピッチャーは何試合でも投げるだろ」
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ