第三章
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「そして鉄もです」
「こちらもですね」
「伝えてくれました、その話はです」
それはとだ、神主は山口にその大人の話をはじめた。その話というと。
まだ岩木山の辺りはまだまだ未開だった、田畑はまだまだ狭く鉄の農具もなく村人達は非常に慎ましやかに暮らしていた。
そこに大柄な、村人達の倍以上はある大きさの赤い角を生やした鬼が来た。鬼は村人だけでなく村々を見て眉を顰めさせた。
「これは何と酷い」
「酷いといいますと」
「何がですか?」
「あんた達の暮らしがだよ」
それ自体がというのだ。
「まともな田畑もまともな農具もないじゃないか」
「そうですか」
「わし等は別にそこまでは」
「他の場所もこうじゃないですか?」
「こんな暮らしじゃないですか?」
「とんでもない、他の場所ではずっといい暮らしをしている」
鬼はこう村人達に話した。
「田畑は広くて立派で農具もだ」
「全部ですか」
「いいんですか」
「そうなんですか」
「そうだ、こんな暮らしをしていると」
それこそというのだ。
「よくない、他の場所の様に暮らさないとな」
「駄目ですか」
「とはいってもわし等はこの数でして」
「田畑も今が限度です」
「農具も今のしか知りません」
「他のものは」
「そうか、ならだ」
鬼はその村人達の話を聞いてそれならとなってだった。
すぐに自分の家から多くの農具を出してきた、それは随分と硬い農具ばかりだった。
「この農具を使うといい」
「あれっ、随分違いますね」
「わし等の農具とは」
「何か使う部分が黒くて」
「随分硬いですね」
「鉄の農具だ」
その農具達を見たり触ったりする村人達に話した。
「これを使えば全く違う」
「そうですか」
「この農具を使えばですか」
「これまでと全然違いますか」
「鉄のある場所も教えるし掘り出し方もどうしてこの様なものを造るかも教える」
それもというのだ。
「それにわしも田畑を耕そう」
「貴方もですか」
「そうしてくれますか」
「田畑を」
「そうしよう、この田畑ではどうにもならない」
狭くそして粗末なそれ等を見ての言葉だった。
「明日から朝早くから夕暮れまでな」
「働いてくれますか」
「そうしてくれますか」
「これから」
「そうしよう」
こう言ってだった、鬼は村人達に鉄の農具を渡し鉄のある場所やそれの掘り出し方それに鉄をどう農具にするかも教えてだった。
その農具を使って田畑を自らも耕した、鬼は実に働き者で日の出から夕暮れまで毎日熱心に働き瞬く間にだった。
田畑はよくなり広くなった、しかも。
水路やあぜ道等も造った、これにより岩木山の周りの村々は鬼が来る前とは全く見違えてしまった。
それでだ、村人達は鬼に感謝の言葉
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