第二章
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「それで悪路王とかな」
「坂上田村麻呂に征伐された」
「その土地だからな」
「蝦夷が鬼ですか」
「そうした話があるのかもな」
「そうですか」
「まあ鬼の話は何処にでもあるけれどな」
武内はこうも言った。
「何処でも」
「そう言われると」
「本当にあるだろ」
「そうですね、それで津軽にもですか」
「あるんだよ、だから興味があったらな」
そうだったらとだ、武内は書類仕事の合間にコーヒーを飲んだ。それで少しエネルギー補給をしてまた仕事をしつつ言った。
「土日に当直がないか休みの時にな」
「その時にですね」
「行って来い」
その津軽の岩木山にというのだ。
「山の麓に神社があるらしいしな」
「そこにですか」
「行ってな」
そしてというのだ。
「色々聞いてみたらいい」
「そうですか、実は」
山口もコーヒーを飲んだ、そのうえでの言葉だった。
「私そうした民俗学みたいなことはです」
「好きか」
「結構」
「そうか、ならな」
「時間のある時にですね」
「そっちに行ってな」
津軽の方にというのだ。
「聞いてこい」
「わかりました」
「ただな」
武内はここでこうも言った。
「大湊は青森でも凄い場所にあるからな」
「ですね、北の外れで」
「船で行くならいいけれどな」
護衛艦である、この場合は。
「それでもな」
「電車は少ないですし」
「車で他の地域に行くにもな」
「不便な場所ですね」
「海上自衛隊の港で一番辺鄙だからな」
そうした場所だからだというのだ。
「行き来は難しいが」
「同じ青森県の場所に行くにも」
「ああ、しかし興味があるならな」
「行ってみていいですね」
「お前車持ってるよな」
「はい、免許も車自体も」
両方共とだ、山口は武内に答えた。
「持っています」
「そうか、ならな」
「休みの時にでもですね」
「行って来い」
「そうしてきます」
山口は武内にまた答えた、そうしてだった。
彼は実際に休日に津軽の岩木山に赴いた、朝早く出たがそれでも着いた頃には結構な時間だったのでやはり大湊は辺鄙だと思った。
そうしたことを思いつつだった、彼は山麓にある神社に向かった。するとその神社の境内にだった。
年老いた神主が出て来た、その彼が山口を見ると声をかけてきた。
「何かありますか」
「はい、大人の話を聞きまして」
山口は神主に答えた、そこで自分の身元も話して怪しい者ではないことも神主に対して話をした。この辺りは彼の性格故のことだった。
そのうえでだ、彼は神主に尋ねた。
「この辺りは、ですね」
「そうです、大人がです」
神主は穏やかな声で話した。
「何かとです」
「助けてくれてですか」
「よくなりました」
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