第三章
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「兄上の仇だ」
「だからですね」
「これより」
「あの男を討つ、弱点はわかっている」
アキレウスのそれはというのだ。
「足首だ」
「そこを射抜く」
「これよりそうされますか」
「そうだ、確かに遠いし的は小さい」
アキレウスの足首、それはというのだ。
「しかも彼の動きは速い」
「まるで風です」
「風の様に動いています」
「やはりギリシア一の英雄です」
「その強さはかなりのものです」
「だが私はやる」
パリスはアキレウスを恨みに燃える目で見つつ言った。
「あの男を倒す」
「その弓矢で」
「そうされますか」
「これよりな」
こう言ってだった、そのうえで。
パリスは弓を構えた、そしてアキレウスを見据えトロイアの城壁の上から矢を放った、その矢は流星の様に飛び。
アキレウスの足首、戦場で戦う彼の右足首を射抜いた。すると。
アキレウスの動きは止まった、彼は音もなく倒れた。そしてもう二度と動くことはなかった。
アイアネアスはその彼を見て苦い顔で言った。
「やはりな」
「足首を攻められたな」
オデュッセウスは冷静な声で述べた。
「心配していた通り」
「確かに足首を狙われてもな」
「その部分は僅かでだ」
「狙っても容易には攻められないが」
「攻めることは確かに出来る」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「ああしてだ」
「倒すことも出来るな」
「そうだ、ああしてな。私は何としても行なわせるべきだった」
「彼に足首も神の加護を受けさせる」
「そうすべきだった」
「もっと強く言ってか」
「友としてな、だが友として」
ここでだ、アイアネアスはその声を強くさせてオデュッセウスに話した。
「彼の亡骸は引き取り」
「葬ってか」
「仇を取る」
「そうするか、では私に考えがある」
「考え?」
「木馬だ、今から話そう」
オデュッセウスはアイアネアスに話した、そしてその話を聞いた後で。
彼はアキレウスの亡骸を引き取り葬った、この時に彼を無二の英雄と讃えかつ自身の忠告の足りなさを嘆いた。そしてその後で復讐も誓った。彼の仇を取ることを。
足首の護り 完
2020・3・21
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