第一章
[2]次話
相手は誰でも
鍛冶と火の神ヘパイストスはある日オリンポスで知恵と闘いの女神アテナと共に飲んでいる時に言われた。
「兄上、宜しいでしょうか」
「どうした?」
「兄上は以前私に言い寄られましたね」
「その話をするか」
ヘパイストスはアテナの今の言葉に苦い顔で応えた。
「あれは私の過ちだった」
「左様ですね。ですが」
「ですが、か」
「兄上ですから」
「妹にそうした感情を抱くことはか」
「はい、母親が違うといっても」
それでもというのだ。
「やはり」
「そう言うとな」
ヘパオストスは妹神に苦い顔で応えた。
「どうもな」
「言葉がないですか」
「だから過ちだったとだ」
こう言うしかなかった。
「そう言っておく」
「左様ですか」
「というかだ」
ここでヘパイストスはアテナに憮然として言った。
「私はこうしたことではだ」
「酷い目に遭っていると」
「わかるな」
「お義姉様のことですね」
「そうだ、我が妻アフロディーテはだ」
「しばしば、いえ」
アテネは自分の言葉を訂正してあらためて言った。
「かなり、ですね」
「そうだ、アレスとの間に何人もの子がいる」
「彼は私の弟です」
「言うまでもなく私の弟でもあるがだ」
ヘパイストスは憮然とした顔で述べた。
「母上は同じだ」
「ヘラ様ですね」
「つまり実の兄弟だ」
「兄嫁と義弟ですね」
「妻は私の甥や姪を生んだのだ」
つまりアレスとの間の子をというのだ。
「他にもヘルメスともな」
「もう一人の義弟ですね」
「そしてさらにだ」
「ポセイドン叔父様とも」
「他にも人間との間にも多くの子をなしている」
「恐ろしいばかりですね」
「私の過ちなぞだ」
ヘパイストスは飲みつつ力説した。
「そう思わないか」
「そう言う兄上も私以外にもですね」
アテネは自分の妻の話を引き合いに出す兄に平然と返した。
「ニンフや人との間に」
「それを言うか」
「当然アレスやヘルメスの侍女にも」
「悪いか」
「お気持ちを抑えられるおつもりはないですか」
「妻がそうなのだ、そして弟や叔父上もだ」
ヘパイストスはこう返した。
「ならいいだろう」
「その理屈は間違っているかと」
「そう言うそなたも男は近付けないが」
「同性をですか」
「違うか、アルテミスもそうだな」
ヘパイストスはこの妹の名前も出した。
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