第一章
[2]次話
NO MORE
もう沢山、正直こう思った。それで彼にも言った。
「もうここにはね」
「どうしたの?」
「飽きたから」
夜の夜景が奇麗な橋の真ん中で言った、今は二人でデート中だけれどそこで彼にこう言った。
「いいわ」
「飽きたって」
「だってここに何度来たと思ってるの?」
彼にうんざりとした顔でこうも言った。
「これまで」
「それは」
「デートの時はいつもここに来るわね」
「会社帰りのね」
私達は勤めている会社は同じでも勤務先は別々だ、同じ東京でもそうなっていて会社帰りのデートはいつも待ち合わせをしてそれで行っている。けれどここは絶対に彼が行こうと言う。
私は最初夜景が奇麗なのでまた来ましょうと言っていた、けれど。
もう何年も週に何回も来ている、それで彼に今こう言ったのだ。
「もう飽きたから」
「それでなんだ」
「別の場所に行きたいわ」
「他の場所にも言ってるじゃない」
彼は私にどうもわかっていない返事で答えてきた。
「バーにも居酒屋にも他の場所にも」
「だからここはいつも来てるでしょ」
夜のデートの時はとだ、また彼に言った。
「そうでしょ」
「だからなんだ」
「そう、言うわ」
「もうここにはだね」
「当分来ないでいいわ」
もっと言えば二度とだったけれどそれは今の気持ちでまた考えが変わるだろうと思って当分と答えた。
「そうしたいわ」
「それじゃあ」
「ええ、他の場所にね」
「行こうね、そこは僕が考えるよ」
「いえ、私も考えるわ」
彼だけだとまた同じ場所になると思った、それでこう言った。同じ会社に同期入社で知り合ってからの付き合いで数年一緒にいて彼が気に入った場所やものはいつも行ったり手にしたり食べたくなる性分がわかってきての言葉だ。
「それはね」
「君もなんだ」
「ええ、とにかくもうここはね」
「いいんだね」
「そう、他の場所にも行きたいし」
ここに来る時間があればだ。
「考えていきましょう」
「そうだね、デートスポットもね」
彼も納得してくれた、実は素直で真面目な人柄だ。だから心から話したらわかってくれる。この性格も好きなところの一つだ。むしろ外見より性格の方が好きだから一緒にいる。多少ずぼらでこうしたところもあったりするけれど浮気も暴力もないし交際するなら最良だと思う。
「これからはね」
「デート考えていこうね」
こうして私達はこの橋に来ることはなくなった、二人で色々デートの場所を探して次は何処に行くかということも話すことも楽しみになった。そんな中で。
彼は私に結婚指輪を差し出して言ってきた。高級フランス料理のレストランで二人でディナーを楽しんでいる時だった。
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