第三章
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「そうする」
「そうなんだ」
「朝起きるまで考えていたが」
それでもというのだ。
「起きてリビングで寝ていてお父さんが来ると起きてだ」
「何かあったの?」
「すぐに起き上がってきらきらした目で尻尾を振って近寄ってくるのを見てな」
それでというのだ。
「お父さんは決めた」
「うちで飼おうって」
「もうドッグフードも首輪もリードも買った」
そうしたものは全てというのだ。
「お皿もな、そして基本家中で飼ってだ」
「犬小屋は飼わないんだ」
「散歩は朝と夕方にだ」
「連れて行くんだ」
「そうする」
こう息子に話した。
「いいな」
「僕里親に出すと思っていたよ」
息子は父に正直に自分の考えを話した。
「多分そうするってね」
「そうだったか」
「お父さんがそう言うなんて」
「だが決めた、だからな」
「これからはだね」
「ベルはうちの家族だ」
「ワオンッ」
そのベルが父の横で鳴いた、そしてだった。
父はこの時から家ではいつもベルと一緒にいる様になった、ベルもその父に一番懐いて離れない。父が仕事に行くと悲しそうに見送って帰ると玄関に来て笑顔で尻尾を振って出迎えた。その父を見てだった。
母も息子も言った。
「まさかね」
「お父さんが犬を飼うなんてね」
「しかもあんなに可愛がって」
「これまでと別人だよ」
「それにベルも懐いてるし」
「ベルが懐くこともね」
「考えていなかったわ」
父にそうなるとは、というのだ。
「お父さんに」
「不愛想で仕事人間でね」
「本当にそうなる要素ないのに」
「動物に好かれるとか」
「それがね」
「本当に意外だよ」
「お母さんもそう思うわ」
こう言うのだった、だが父は。
ベルとの生活を満喫し家の話題は彼のことばかりでいつもベルに笑顔を向ける様になった、そしていつも自分と一緒にいる彼と家でも楽しく過ごす様になった。彼等の暮らしは一郎が成人して結婚して孫が出来ても続いた、父もベルもいつも幸せそうだった。その彼等を見る母も息子も彼等と同じであった。
刑事の父の変化 完
2020・9・29
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