第95話『予選@』
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一体何の用だろうか。正直、何を言われるのかとかなり緊張している。
「君は【日城中魔術部】のメンバーで間違いないね?」
「はい、そうですが……」
「良かった。僕の用件はね、君のチームメイトについてなんだ」
彼は笑顔のままそう言った。
つまるところ、これは偵察ということだろうか。もはや弱小チームである【日城中魔術部】の、気になるメンバーとは……?
「君のチームに、銀髪の女の子がいるだろう? 彼女について訊きたいんだが」
銀髪の女の子──結月か。
確かに彼女は、レベル5の能力"白鬼"を宿していて、この大会の数少ないレベル5の魔術師だ。
どうやってその情報を嗅ぎつけたのかは知らないが、要するにアーサーは自分と同じレベル5の魔術師を警戒しているということだろう。随分と用心深いことで。しかし、
「……易々と、仲間の情報は売れません」
それが緋翼の答えだった。
魔術師の勝負において、手の内を晒すことは1番の愚策である。まして自分ではなく、チームメイトの情報など言える訳がない。
だが、アーサーはその反応が予想通りだったらしく、笑顔のまま肩を竦めた。
「そうだよね、君の言う通りだ。小さい見た目に似合わず、君はとても強かな女の子なんだね」
「……」
「おっと、何か気に障ってしまったかな? それならすまない。僕は褒めたつもりだったんだが……」
「……いえ、こちらこそすみません」
「小さい」と言われてつい睨んでしまったが、アーサーが心底申し訳なさそうな表情をしたので、怒る気が削がれてしまった。
この仏の様な素直さと礼儀正しさを、誰かさんにも見習って欲しいものだ。
「邪魔してすまなかったね。……あ、でも名前くらいは訊いちゃダメかな?」
「それくらいなら……三浦 結月ちゃんです」
「……ふむふむ。ちなみに、君の名前は?」
「私ですか? 私は辻 緋翼です」
「そっか。うん、覚えた。ありがとね」
そうにこやかにお礼を言って、アーサーは去っていった。
年齢はあちらが上なのに、最後まで丁寧な態度だったな。イケメンは性格までイケメンということか。
「ま、私はちょっと苦手だけどね……」
そう呟いて、緋翼は予選に向けて準備運動を始めるのだった。
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